近代日本における政治思想、社会規範、経済発展の相互関係に関する総合的研究
【研究キーワード】
近代日本史 / 政治思想 / 社会規範 / 法制度 / 経済発展
【研究成果の概要】
昨年度は、[構築・展開段階]の初年度にあたり、代表者を中心として、(1)先端的研究動向の把握の継続、(2)研究目的に沿った、具体的な研究論文執筆の方向性の確立、(3)共同討議による相互的な研究内容の彫琢を推進した。 オンライン上でのメンバー全員での研究会合を年度中2回持って、問題意識の共有を図るとともに、メンバーの部分的な会議を繰り返し行い、研究成果の内容充実に努めた。これらの会合を通じて共同研究者それぞれが現在の問題意識と既存の研究成果内容を約・発表し、それらを改善するためのコメントやディスカッションを行うとともに、共同での研究促進のための方向性に関して議論を行った。(4) 以上の討議の成果を踏まえて、各自が所属する国内・外の研究会・セミナーや学会での研究成果の個別的発表を行ったが、先端的研究の把握のために、海外の研究者との交流を図るという課題は、コロナ禍に伴う環境変化によって海外渡航が不可能となり不完全になった。しかし、その分の資金を戦略的にオンライン会議と学会発表の開催のために使用することで、有効に活用することができた。
研究代表者は、本年度は、本共同研究における最も重要なキーワードとなるナショナリズムに焦点を据えて、近代日本におけるナショナリズムの発展の分析を集中的に行った。特に本年度は、近代日本文学という一見したところ、経済社会と無関係な対象を選択して、夏目漱石、坂口安吾という二人の文学者が見た日露戦争、および太平洋戦争後の日本社会の在り方と日本人の社会的な規範意識の変化に対する批判的な考察をもとにしつつ、日本人の社会や国家意識の変動とその基底に存在する不変性について考察することを通じて、間接的に日本近代の社会規範や政治経済構造の変化と連続性という問題を厳密に摘出することを試みる論文を発表した。
【研究代表者】