異なる水温環境におけるサケの産卵および降海生態に関する比較研究
【研究キーワード】
サケ / 産卵環境 / 選択性 / 水温 / 繁殖生態 / 河川環境 / 三陸 / 産卵生態 / 降河生態
【研究成果の概要】
本年度は鵜住居川におけるサケの産卵環境の選択性に関する調査を実施した。河口から1-4.4kmの区間(調査区間)を計10個に区分し、調査区域を設定した。産卵期を網羅する9月から2月にかけて隔週で調査区間を踏査し、新たに形成された産卵床の位置と数を記録した。また、10月から12月にかけて、それぞれの区域でピエゾメーター法により河床内20 cmの水温を測定した。さらに、新しく形成された産卵床(102床)とその近傍の非産卵場所(67点)の河床内及びそれぞれの表流水について、水温、溶存酸素量(DO)、電気伝導度(EC)を測定した。また、全ての測点の河床材料を分類・記録した。その結果、鵜住居川では10月26日から1月20日の間に412床の産卵床が観察された。また、河床内水温(1.0-4.0°C)および河床材料は区域ごとに大きく異なっていた。一方、産卵床内の水温、DO、ECは10.9 [8.6-12.0]°C、8.1 [6.8-10.8] mg/L、75.1 [69.9-85.6] μS/cmであり、表流水よりも水温とECが高く、DOは低かったため、地下水湧出の影響を受けていることがわかった。産卵床内と非産卵場所の河床内環境を比較したところ、両者の水温、DOに差はなく、産卵床のEC(75.1 μS/cm)は、非産卵場所(85.5 μS/cm)よりも有意に低かった。河床材料は、産卵床では礫が優占し、非産卵場所では砂が優占していた。以上の結果から、昨年度明らかになった小槌川における多量の湧水を忌避する産卵環境選択と異なり、鵜住居川では湧水を選好することが示唆された。これは、河床内水温が概ね8°C以上に保たれている小槌川では貧酸素環境をもたらす湧水が忌避されるのに対し、河床内水温が1.0から14.0°Cと大きく変動する鵜住居川では適水温を確保するため湧水が選好されていることを示唆する。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2024-03-31
【配分額】3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)