海に漂うマイクロプラスチックの生体影響をムール貝のマルチオミクス解析で解明する
【研究キーワード】
ムラサキイガイ / 海洋汚染 / トランスクリプトーム / メタボローム / マイクロプラスチック / イガイ類 / 遺伝子
【研究成果の概要】
マイクロプラスチック(MP)による海洋汚染は世界的な問題となっているが、実際に生物に及ぼす影響は十分にはわかっていない。本研究では、沿岸生態系の優占種であるイガイ類に、MP粒子を実験的に取り込ませる実験系を確立し、まず体内残留時間が粒子サイズにより異なることを発見した。
次に、モデルMP粒子および同粒子にPCBを吸着させたものに15日間ムラサキイガイを曝露し、外套膜、生殖腺、消化管についてトランスクリプトーム、メタボローム、心拍数解析を行った。トランスクリプトーム解析において、曝露により発現変動した遺伝子の多くが機能未知遺伝子であったことから、未知の生理反応が起こっている可能性が示唆された。
【研究の社会的意義】
本研究ではMP汚染の影響を調べる実験系を、都市近郊に分布し、大量の浮遊粒子を濾過食によって取り込む性質がある一方、食用種でもあるムラサキイガイ(ムール貝)を用いて確立した。この成果を参考にした多くの論文が発表されており、世界のMP影響研究の進展に貢献できた。
同種が粒子を取り込む動画も作成し、その発表論文も多くのアクセスを得ている。
さらに、MPやPCB-MPに対する生理応答に多くの未知遺伝子が関与することがわかった。これらを正確に理解するには、貝類の遺伝子や代謝に関する情報を今後より充実させる必要がある。比較解析のために解読した近縁のミドリイガイのゲノム配列も世界中で利用されている。
【研究代表者】