同時一斉産卵の同調性および受精効率を考慮した新しいサンゴ加入モデルの構築
【研究分野】水圏生産科学
【研究キーワード】
大規模撹乱 / 幼生供給 / 産卵予測 / サンゴ礁 / 幼生加入 / 同時一斉産卵 / ミドリイシ属 / ミドリイシ / 造礁サンゴ / 繁殖生態 / 初期生活史 / 生物環境 / サンゴ礁生態系
【研究成果の概要】
サンゴ群集の維持・回復には、毎年の幼生加入が重要である。これまで、複数の定点で幼生加入量を長期的にモニタリングしたところ、10~100倍の年変動があることが分かった。本研究では、この年変動の要因として、一斉産卵の同調性に注目し、年によって同調性にずれが生じ、ずれが大きい場合に加入量が減少するという仮説を検証した。その結果、2016年に起きた大規模白化以降、同調性に関わらず加入量が激減するという傾向が明らかとなった。このことから、大規模撹乱が起きた場合には、幼生供給源となる親サンゴの減少および供給ネットワークの分断という、通常時とは異なる要因によって加入量が左右されることが示唆される。
【研究の社会的意義】
本研究では、特殊な繁殖イベントとして注目されてきた『同時一斉産卵』現象を、生活史の観点から個体群変動を制御するプロセスとして捉え、『同時一斉加入(simultaneous mass recruitment)』という新たな概念を提唱した。産卵の同調性を定量化し、放卵放精、受精、幼生分散、および着生までの各段階における減衰を考慮した新しい「加入推定モデル」を構築することで、気候変動に伴う造礁サンゴの再生産の変化を予測することが可能になると期待される。
【研究代表者】