水産業における商品価値の研究
【研究キーワード】
水産物価格 / マーケティング / AI / 道具的的価値 / 関係価値 / 水産物消費 / 応援買い / 生態系の価値 / 関係性価値 / 水産物
【研究成果の概要】
水産物は、規格品である工業製品とは異なり多様性を有している。この中、グローバルな規模でクロマグロなどの高級魚は過剰漁獲が問題となる一方で、日本のローカルレベルではシイラなどの不人気魚は買い手がつかず水揚げ港で投棄される例も多い。資源を有効に人類が活用するためにはAIなどを活用して顧客の個人的な商品嗜好を個別に分析し「おすすめ商品」を提示するアプローチが存在する。本研究ではこの基盤となる情報や考え方を体系的に整備するため、日本だけでなく外国の消費者などを対象とし、人間が自然環境や食物に対して感じる多様な価値観がどこから生じているのかを本質的に解明することを目指す。
本年度の成果としては、日本の消費者が、東日本大震災の被災地で生産される水産物に対して抱く価値を明らかにした。具体的には、消費者は被災地水産物を応援買いをする意思があるが、この意思は震災直後に高く、時間が経つにつれて弱まった点、また放射性物質への忌避感を有するが、これは震災直後から比較的高いレベルで続いている点、更には水産物を自己の関心事項(栄養摂取などの食品本来の価値)に基づいて消費する意思は震災直後より最近の方が高まっていることなどを解明し、学会誌にて発表した(鈴木・八木(2021))。これは、応援買いという社会的な行動を消費者がとる傾向がある時期は数年程度と短く、一方で自己の関心事項に基づく消費は永続する傾向を示した点で、意義が存在する。また別途、シンガポールにおいて水産物消費者の意識調査を実施し、抱卵した水産物への選好が消費者の宗教により異なる点も明らかにした(Sayeed et.al, 2021)。更にエコラベル製品に関する生産者側の意識が賞筆者と異なっている点を明らかにした(Ishihara et al., 2021)。研究成果は国際ジャーナルで発表しており、学術的貢献は一定水準で達成できたと考える。
【研究代表者】