組織の行動行政学:構造、タスク、構成員がパフォーマンスに与える効果の官民比較実験
【研究キーワード】
行政組織論 / 実験社会科学 / 実験政治学 / 実験経済学 / 社会心理学
【研究成果の概要】
本研究の目的は、行政組織のパフォーマンスが向上する条件とそのメカニズムについて、組織構造、タスク、そして構成員間におけるコミュニケーションに着目して解明することにある。研究期間初年度である2021年度は、実験デザインの設計と設計の妥当性を確認するための学生を被験者としたプレ実験を実施することを計画していた。しかしながら、covid-19による移動制限や実験施設の利用制限の影響を受け、チームが所属する各機関で学生を被験者とした実験を実施することは極めて難しくなり、インターネットを活用して実際の公務員を対象とした実験を実施することとした。
この実験では、インターネットを介して公務員をフラット型組織と階層型組織とに無作為に割り当て、さらに各組織内における役割(課長、係長、係員)についても無作為に割り当てた上で、一定の予算制約の下で取り組むべき事業の優先順位をつけるというタスクを課してそのパフォーマンスを測定した。実験の結果、階層型組織の係員はフラット型組織の係員よりも多くの事業について優先順位を高くつける傾向にあり、その分、中間管理職である係長が絞り込んだ上で課長に案をあげていることが明らかになった。最終的なパフォーマンス自体についてはフラット型組織と階層型組織との間に大きな差は生まれないものの、上述の理由からフラット型組織のトップである課長の負担は階層型組織の課長の負担よりも大きくなっていることが示された。これらの結果の一部は、世界政治学会(International Political Science Association)のWorld Congressにて報告された。
【研究代表者】