蛍光発光原理解明のための有機化学
【研究分野】化学系薬学
【研究キーワード】
蛍光 / プローブ / FRET / PET / 加水分解酵素 / 一酸化窒素 / 亜鉛イオン / 活性酵素 / 活性酸素 / ERET
【研究成果の概要】
21世紀の生命科学として、"生きている状態"の細胞あるいは生体組織から生体分子を時々刻々の動的変化に対応して捉え、真の生命現象を解析する研究が重要視されている。このためには従来に無い画期的バイオイメージング技術の開発が求められている。本研究は「蛍光発光原理解明のための有機化学」を研究課題としているが、これは生体組織から生体成分を検出するバイオイメージングプローブの創製を最終目標としている。
まず、はじめに蛍光発光の原理としてPhotoinduced Electron Transfer (PET)機構の詳細な解析を行い、それに基づいて一酸化窒素(NO)、亜鉛イオン、活性酸素さらには一重項酸素のプローブの開発に成功した。さらに、別の機構であるFluorescence Resonance Energy Transfer (FRET)の詳細な解析を行った。FRETにおける励起エネルギー移動速度定数はFoerster式に規定されるが、これは具体的には(1)ドナーとアクセプターの相対的モーメントの向き(配向因子)、(2)ドナーの蛍光スペクトルとアクセプターの吸収スペクトルの重なりの程度(重なり積分)、(3)ドナーとアクセプターの距離、の三点が重要であることを示している。我々は(2)と(3)に基づいた蛍光特性の変化を精査し、その検討に基づいて、protein tyrosine phosphataseとphosphodiesteraseのプローブ開発に成功した。これらの原理に基づく発光特性の変化は普遍性があり、他の生体分子プローブの創製にも応用できるものであり、この点から本科学研究費補助金で行われた研究プロジェクトは大成功であったと総括できる。
【研究代表者】