燃料電池反応を応用した有機合成
【研究分野】工業物理化学・複合材料
【研究キーワード】
燃料電池 / 部分酸化反応 / プロピレン / ベンゼン / ワッカ-反応 / πーアリル酸化 / フェノ-ル / 塩化サマリウム
【研究成果の概要】
申請者らは、プロトン伝導膜と各種電極を組み合わせた燃料電池システムを応用し、燃料を完全燃焼させずに、選択的に部分酸化反応を進行させ、電力を得ると同時に、付加価値の高い物質を合成するシステムを考案した。本研究では、この燃料電池反応システムを用いて、プロピレンのワッカ-型酸化およびπーアリル酸化、さらにH_2ーO_2燃料電池反応中にカソ-ド上に生じる活性酸素種によるベンゼンからのフェノ-ル一段合成を実施し、両反応を支配する作用因子について検討した。
1.プロピレンの酸化反応について以下の知見を得た。
(1)回路短絡時には、πーアリル酸化によるアクロレイン、アクリル酸の生成が主に進行する。(2)外部から電圧を電流が増加する方向に加えると、ワッカ-型酸化反応によるアセトンの生成速度が急激に増大し、πーアリル酸化の速度は逆に急激に低下する。(3)外部回路に負荷を置き、電力を取り出しながら反応させると、ワッカ-型酸化はほとんど進行せず、ほぼ100%の選択率でπーアリル酸化が起こる。
以上のように燃料電池反応システムを用いたプロピレンの部分酸化反応では、印加電圧または電流値の制御によって、ワッカ-型酸化とπーアリル酸化の選択性を自由にコントロ-ルできる。
2.H_2ーO_2の燃料電池反応中にカソ-ド上に生じる活性酸素によるベンゼンの水酸化反応について以下の点が明らかになった。
(1)カソ-ド電極としてCr,Mn,Fe,Ni,Cu,Znや希土類金属の塩化物を含浸したグラファイト電極を用いると比較的高いフェノ-ル生成活性を示し、中でもSmCl_3含浸グラファイト電極が最も有効である。(2)アノ-ド室の水素圧が0.05気圧以上であれば、水素圧に依らず一定量のフェノ-ルが生成する。(3)カソ-ド室に送り込む酸素の分圧が高いほど、フェノ-ル生成活性が高い。(4)外部から電圧を電流が増加する方向に加えると、印加電圧200mVでフェノ-ル生成活性は極大となる。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
秦野 正治 | 東京工業大学 | 工学部 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1990
【配分額】2,200千円 (直接経費: 2,200千円)