魚類成長-回遊モデルを用いたカタクチイワシの生活史戦略の解明
【研究キーワード】
水産動物 / 生態 / 行動 / 水圏環境 / 生物環境 / 生活史 / 生態・行動
【研究成果の概要】
スタミナトンネル水槽(閉鎖型循環水槽)を用いて、瀬戸内海系群および太平洋系群のカタクチイワシの遊泳に伴う呼吸代謝量を直接測定し、呼吸代謝の水温依存性、体重依存性、遊泳速度依存性を精査した。その結果、瀬戸内海系群、北太平洋系群の両者において呼吸代謝の水温依存性、体重依存性、遊泳速度依存性を求めることに成功した。カタクチイワシ属は取り扱いが難しく、これらの特性をすべて求めた例は他になく、貴重なデータを取得できた。また、断片的に求められている海外の他海域のカタクチイワシ属の呼吸代謝特性と比較すると、沿岸域に生息する瀬戸内海系群だけが特異的な呼吸代謝特性を持っていることが明らかとなった。
【研究の社会的意義】
カタクチイワシ属の呼吸代謝に関する飼育実験は難しくこれまで限定的にであったが、水温、体重、遊泳速度依存性をカタクチイワシの2つの系群で求めた意義は大きい。また、同じ種内で系群間に呼吸代謝特性の差があることが明白となった点、生態学的に貴重な知見である。さらに、呼吸代謝特性の差が、系群間で異なる生息海域、回遊海域を選択する理由の一つである可能性を示した点、資源管理の面からも有用な情報と考えられる。
【研究代表者】