アカマツ林における菌根菌の多様性と材線虫病抵抗性の関係の解明
【研究分野】林学
【研究キーワード】
アカマツ / 松枯れ / 菌根菌 / 多様性 / 水耕 / ハルティッヒネット / 菌鞘 / マツノザイセンチュウ / 枯死率
【研究成果の概要】
筑波山周辺のアカマツ林16ヶ所に調査区を設け、出現する菌根菌および腐生菌の子実体の種と発生日時、発生本数を2週間に1回の頻度で調査した。その結果、マツ枯れの発生によってアカマツの本数が減少した林分においては、菌根性の子実体の種数および本数の減少していることが明らかにされた。一方、アカマツの枯死が見られても、コナラなどの菌根性樹種が多い林分においては、マツ枯れによる菌根菌の種多様性の減少が押さえられることが明らかにされ、アカマツとコナラとを共に宿主とする菌根菌の存在により、林分の菌根菌の多様性が高められていることが明らかにされた。
菌根菌の多様性がマツ枯れ抵抗性に寄与するかどうかについては、被害進行係数あるいは被害率と、前年の菌根菌発生主数あるいは本数との関係を解析することによって検討したが、マツ枯れ抵抗性に寄与しているとする証拠は得られなかった。マツ枯れの被害進行係数および被害率に最も寄与していたのは、その年までの薬剤空中散布の有無であった。
一方、マツ枯れが最も激しかった林分において生残していたアカマツの根において、菌根形成率は健全なマツ林と変わらず高い値であったが、マツ枯れ林分の菌根は古い菌根とみられる褐色のものが多くを占めていたことから、生残マツにおいても潜在感染あるいは不適な土壌条件によって、新たな根端の成長が阻害されていたことが示唆された。
菌根菌の接種試験に供するため、水耕によりマツ苗の根を無菌根化することを試みたが、常時水面下にある根においても、新たな菌根菌の感染とハルティッヒネットの形成が見られることが明らかにされた。しかし、菌鞘は形成されなかった。従来、水耕条件においては外生菌根が消失するとの報告が見られたが、菌鞘はみられなくとも、菌根菌の感染,定着は起こっていることがあることが示された。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】2000 - 2001
【配分額】2,300千円 (直接経費: 2,300千円)