炭素分配戦略の視点から明らかにする天然スギ機能形質の地理変異
【研究キーワード】
水利用 / カルシウム / BVOC / 降雨遮断 / 機能形質 / スギ / 地理変異 / 共通圃場 / 炭素分配 / 生態系機能
【研究成果の概要】
スギは日本の森林で最もバイオマスの大きい樹種であり、全国に分布し森林面積の約20%を占めている。すなわちスギという樹種が日本の温帯林生態系の骨格構造を形成していると言っても過言ではない。近年、日本各地に分布する天然スギ集団が遺伝的に分化しているだけでなく、根浸出物や二次代謝物質などの機能形質にも大きな違いがあることが明らかになりつつある。しかしながら、機能形質の地理変異をもたらした要因や形質間の相互関係、更にはそれらの生態系機能への影響はほとんど明らかにされていない。
本研究は全国14集団の天然スギを対象に、複数の共通圃場での比較実験により機能形質の地理変異を詳細に調べ、炭素の配分を基軸としてその機能間関係を明らかにするとともに、降雨遮断・付加実験などによって、異なるスギ集団がCa動態や水循環を中心とする生態系機能に及ぼす潜在的影響の違いを明らかにする。
本課題では炭素分配を基軸として成長と防御、水利用様式などの機能的連関を明らかにする。繁殖への投資の変異も林冠木では重要な要素と考えられるが、幼木を対象にすれば除外することが可能である。川渡、新潟、筑波、熊本の共通圃場には14集団のエコタイプ個体が十分な反復を持って生育し、樹高2-4m程度となっている。ここで共通してみられる機能形質の違いは自然選択による局所適応を反映していると考えられる。
本研究では1)根からの浸出物放出量、2) BVOCの成分と放出量、3)葉のCaやリン(P)、窒素(N)を始め二次代謝物質など様々な化学的成分、4)光合成・蒸散における水利用特性、などの形質や機能の解析を数多くの個体を用いて行う。異なった環境下にある複数の共通圃場での結果を比較することで機能形質の反応基準(遺伝-環境交互作用)も明確にする。
【研究代表者】