多数国間環境条約の実効的実施に関する研究
【研究分野】国際法学
【研究キーワード】
国際環境法 / 遵守 / 生物多様性 / 気候変動 / 有害廃棄物 / 環境損害 / 環境と貿易 / WTO / 紛争処理 / 多数国間環境条約 / 実施 / 環境法 / ワシントン条約 / ハンゼル条約 / 気候変動枠組み条約 / バーゼル条約
【研究成果の概要】
地球規模での環境保護が、今日の国際社会にとって最も重要な課題の一つとなっていることはすでに周知のことである。1972年のストックフォルム人間環境会議を契機とし、国際環境保護に関する「法の欠缺」が意識され、環境保護を目的とした条約が急速に策定されてきた。しかし、これらの国際環境条約、一般原則等が十分に履行されてきたかというと必ずしもそうではない。例えば過去に締結された条約の中には、結局は機能せず、「眠れる条約(sleeping treaty)」となってしまっているものもある。こうした中で1992年の地球サミット以降、急速に国際環境法の実施(implementation)、すなわち「遵守(compliance)」の問題がクローズアップされてきた。こうしたことから、本共同研究では、3年間を通じて、多数国間環境条約が国際的及び国内的レベルで、適切に実施・履行されているかを個別的に主要な条約を調査し、検討することを目的とした。また、その一方で、環境損害の問題と密接な関連を有する国家責任並びに、国際賠償責任、民事責任についても理論的・実証的に考察を試みた。平成11年度は、概念的な分析の枠組みを設定するべく、「遵守」に焦点を当てた。まず「遵守」の前提とされるべき、国際環境法における義務の性質に関して、ハード・ロー及びソフト・ローの観点からidentifyすることとした。その前提に立って、「遵守」が促進されうるための規制的手法と助成的手法を各局面で考察した。また、国内レベルでの「遵守」に関して、国際法との連動がうまくいかないとするとそれはどうしてか等の問題点について詳細に検討した。平成12年度は、特にアジア太平洋地域に焦点を当てた。環境法の遵守問題は、国際(地球規模)、地域(EUや北米、南米、アジア太平洋などといった地域)、国内のいずれのレベルで取り組むことが効果的であるのかという問題意識があり、その一つの検証として、アジア太平洋地域を対象としたのである。その結果、より効果的な環境問題の解決のためには、ある種の環境問題は、国際的レベルよりもまず地域的レベルで解決が図られることが望ましいことが判明した。平成13年度は、環境法の実効的な遵守を促すためには、環境保護と自由貿易との抵触の問題を解決する必要があることがそれまでの研究より明らかとなったため、環境と貿易の問題に取り組んだ。この研究の結果、WTOなどの自由貿易機関が必ずしも環境保護に積極的ではないことなどの問題点が指摘された。
【研究代表者】