絶滅危惧種オランウータンの野生復帰事業改善を目的とした法医学的研究
【研究キーワード】
野生生物保全 / 大型類人猿 / 霊長類 / 熱帯雨林 / 自然人類学 / 法医学 / 動物行動学 / 受傷
【研究成果の概要】
本研究では、絶滅危惧種の霊長類オランウータン(Pongo属)を対象として、主に法医学(形態学)及び動物行動学の手法を用いて、野生個体の受傷痕(ケガの痕跡)を分析することで、野生下での生存リスクを明らかにし、本種の野生復帰事業を改善することを目指している。具体的には、(1)法医学的手法を用いて、博物館等に収蔵されている骨格標本を対象に、骨折の治癒痕等を調べ、その原因を推定するとともに、性別や年齢による違いがあるかどうか調べる。(2)野生下で生体の受傷(顔や体の傷跡)の形態や部位を調べ、その特徴を明らかにする。
2021年度は、コロナ禍のためにマレーシアを含め海外調査を行うことができなかったので、主に過去にマレーシアで収集した資料の整理・分析及び飼育下で収集した資料の分析を行った。代表者は、過去に収集した写真や動画の分析を行うとともに、謝金を使って、2019年以前に収集した行動観察データの入力作業を行った。分担者の蔦谷は、基礎的な資料を得る為、飼育下の個体から採取した試料について同位体分析を行った。
2019年度にマレーシア計8個体の骨格標本からDNA分析用のサンプルを、現地共同研究者のVijay Kumar博士(マレーシア・サバ大学)に渡し、分析を依頼していた。2020年度にKumar博士が実験を行い、8個体中、特に重要な4個体について、DNAの抽出に成功しており、2021年度はこれらのサンプルにつて分析を行った。しかし、DNAの抽出量がわずかだった為、性別判定を行うことができなかった。骨格標本からの再サンプリングが必要となったが、日本人研究者が渡航できなかった為、2021年度中に再サンプリングを行うことができなかった。
【研究代表者】