北方林において落葉広葉樹は増加しているのか?多地点・長期・年輪データの利用
【研究キーワード】
北方林 / 落葉広葉樹 / 針葉樹 / 長期的動態 / 年輪解析 / 安定同位体比 / 気候変動 / 二酸化炭素濃度上昇 / 種組成変化 / 年輪
【研究成果の概要】
本研究は、世界的に報告されている北方林における落葉広葉樹の増加の普遍性の検証、メカニズムの解明をするために、北海道全域の天然林を対象に、落葉広葉樹率の変化が地理的にどのように起きているのか、20世紀初頭から変化し続けているのか、落葉広葉樹・針葉樹がそれぞれどのように環境変化に応答しているのか、を検証する。そのために、(1)多地点データによる落葉広葉樹率変化の地理的パターンの解析、(2)歴史的資料解析による落葉広葉樹率の20世紀中の変化の解析、(3)年輪データ解析による環境変化応答の落葉樹・針葉樹の比較を行う計画となっている。
本年度は、(1)については文献調査を行い、関連する先行研究事例やデータを収集した。(2)については、北海道演習林に保管されている資料の整理と情報の収集を行った。また、1960年代以降の毎木測定データを解析した結果、北海道演習林では落葉広葉樹の割合が広域的に増加していた。(3)については、北海道演習林に保管されていた年輪解析資料を数値データ化した。また、2021年に伐採された樹木50本から、年輪を解析するための切断面を円板状に採取した。この採取した円板をスキャナーで画像として取り込み、年輪幅の測定を行った。これらの年輪データを解析し、針葉樹と落葉広葉樹の長期的な幹成長パターンを解析した結果、針葉樹では、過去100年にわたって連続的に成長量が減少している可能性が示唆された。一方で、落葉広葉樹は1980年以前はほとんど減少は見られず、1980年以降に減少する傾向が示された。つまり、針葉樹の成長量の低下が、北方林の落葉広葉樹の増加に関係している可能性がある。今後は、この要因を解明するために、環境要因との関係性の解析や、年輪の安定同位体比の解析を行う必要がある。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)