三次元培養法と薬物動態解析の融合による猫乳腺がん制御機構の解明
【研究キーワード】
オルガノイド / 乳がん / 猫 / 抗がん剤 / 薬物動態
【研究成果の概要】
猫の乳腺がんは、手術後のがん再発および転移率が非常に高く完治が難しいことから、新規治療法および早期診断マーカーの開発が獣医療の現場において強く求められている。本研究では、申請者が樹立した猫乳腺がんオルガノイドを用いて猫乳腺がんの詳細な悪性化制御機構を明らかにする。さらに、抗がん剤に抵抗性を示すオルガノイドと薬物動態パラメーター解析技術を用いて、抗がん剤抵抗性獲得機序を明らかにするとともに新たな治療標的を探索する。三次元培養法と薬物動態解析技術を融合的に活用することで各患者動物に最適化された新たながん治療の開発につながる研究を推進する。今年度は、15系統の猫乳がんオルガノイドを確立し、各オルガノイドの形態解析、各ホルモンレセプター発現および抗癌剤感受性試験を実施した。オルガノイドを作製するにあたってサプリメントX,Y,Zを含む培養液を用いることで効率的な培養が可能になることが明らかになった (特許出願中) 。各オルガノイドの形態は充実性のbasalタイプと管腔状のluminalタイプが観察された。オルガノイドと摘出した組織について構造および細胞マーカー発現の比較を行ったところ、それぞれ類似した上皮組織構造を示すとともに、ホルモンレセプターであるHER2、ERおよびPRの発現についても発現パターンの一致が認められた。さらに乳腺がん罹患猫の血清サンプルを13検体収集し、京都大学医学部質量分析室と解析法の打ち合わせを実施した。また、作製したネコ乳がんオルガノイド15系統を用いて、カルボプラチン抵抗性を示すオルガノイドを複数同定した。さらに、カルボプラチン抵抗性を示すオルガノイドにペット用漢方薬シベリアを処置することで猫乳がんオルガノイドの増殖を顕著に抑制することを明らかにした。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
中尾 洋一 | 早稲田大学 | 理工学術院 | 教授 | (Kakenデータベース) |
呰上 大吾 | 東京農工大学 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2021-04-01 - 2025-03-31
【配分額】17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)