消化管運動調節系としての神経・ペースメーカー・免疫のクロストーク -消化管機能改善による動物生産性向上のための基盤研究-
【研究分野】基礎獣医学・基礎畜産学
【研究キーワード】
マクロファージ / 腸運動 / 炎症 / プロスタグランジン / 平滑筋 / 収縮性 / 一酸化窒素 / IL-1β / NOD2 / 腸
【研究成果の概要】
消化管の筋層間に均一に分布しているマクロファージ(筋層間常在型マクロファージ)は、蠕動運動をコントロールする壁内神経細胞やカハール介在細胞に近接して存在する。このため、消化管運動系との相互反応が予想され、これらマクロファージが特に消化管病態時における運動障害に関わる可能性が示唆されている。本研究プロジェクトにより以下の成果を得ることができた。
(1)筋層間常在型マクロファージの生物学的性状:形態学的特徴(免疫染色、電顕、共焦点顕微鏡)、静止膜電位を形成するKチャネル、Ca動態からみた薬理学的性状(受容体、cAMPによる抑制系機序)、活性酸素の産生と細胞内pH低下、プロトンチャネルの存在、などを証明した(Neurogastroenterology and Motility 16:39-51,2004)。(2)IL-1βの長期処理:IL-1β、3-7日の処理で平滑筋収縮が抑制されることが明らかとなった。この機序として、収縮蛋白系のCa感受性低下が関与すること、そしてRho-ROCK系の中のCPI-17のダウンレギュレーションが主要なメカニズムであることを発見した(J Biol Chem.278:48794-48804,2003)。(3)TNBS誘発クローン病モデル動物:炎症部位の平滑筋収縮能が減弱すること、自発性収縮も減弱していること、これらの収縮性の変化には内因性の一酸化窒素やプロスタグランジンは関与しないこと、さらにパッチクランプ法により平滑筋細胞の電位依存性Caチャネル活性(L-type Caチャネル)が低下していることが明らかとなった(Am J Physiol 285:G483-493,2003)。
【研究代表者】