標的遺伝子に点突然変異をもつマウスの開発研究
【研究分野】実験動物学
【研究キーワード】
ミュータジェネシス / マウス / 逆遺伝学 / ゲノム機能 / 遺伝子機能 / 突然変異誘発 / エチルニトロソウレア / モデル動物 / 標的遺伝子変異体
【研究成果の概要】
総数3000万のENU誘発点突然変異をもつ1万匹の雄マウスを凍結精子として系統保存した。そのゲノムDNAもすべてアーカイブ化した。疾患モデル開発や遺伝子機能解明にむけ、この膨大なゲノム機能解析資源から、外部研究者が簡便に標的遺伝子に点突然変異マウスを入手できるシステムを整備構築するが本研究の目的である。4年間で、分担班員それぞれが提案した遺伝子にPCRプライマーを設計し、権藤が順調にアーカイブから変異を発見した。また、本研究班での成果を基に一般ユーザーへの公開も推進し、班員を含め国内外43の研究室が変異マウス系統開発に現在参画している。標的遺伝子総数は最終年度で251に達し、立ち上げ当初の5倍となった。また発見した変異総数も400を超えそのうち70系統以上を体外受精法などでマウスに復元した。プライマーを設計した班員全員へはもとより、国内外のユーザーにも復元した変異マウスを広く提供でき、システムの実用化に成功した。当初の申請計画を遥かに上回って本研究の目的を達成したことになった。現在、遺伝子機能解明に向けて解析中であり、原著論文としての成果も出始めた。統合失調症モデル、うつ病モデル、多指症モデルなどが成果の例である。また発見した点突然変異の集積結果より、コーディング配列上に発見した変異の61%はアミノ酸置換、10%はナンセンス変異やスプライシング変異、残りの29%が同義置換であった。ナンセンス変異やスプライシング変異はNMDも含めKOアリル相当の変異と考えられる。ヒトやマウスゲノムの1%がコーディング配列であることから、凍結精子アーカイブ全体には18万のアミノ酸置換系統と3万のKO相当変異系統が含まれていることになる。本邦独自の新しい逆遺伝学ツールとして疾患モデル開発への応用など研究者およびコミュニティー全体の利用をさらに広げていく研究基盤が本研究によって構築整備できた。
【研究代表者】