ウイルスの感染・増殖における宿主細胞の細胞骨格系の役割
【研究分野】基礎獣医学・基礎畜産学
【研究キーワード】
ウイルス / アクトミオシン / アクチン / 重合阻害 / ペクテノトキシンII / ミカロライドB / チューブリン
【研究成果の概要】
本研究での目的はウイルスの感染・増殖機構において宿主細胞のアクトミオシン系が関与する機構を解明することである。本年度は以下の成果を得た。
(1)海洋由来天然生理活性物質の中から、アクチン重合阻害活性を持つ新規化合物、ペクテノトキシンIIの作用についての解析を行った。この化合物は、これまでに我々が発見したミカロライドBとは異なりアクチンに対する積極的な切断作用は示さなかった。ただし、ミカロライドBと同様に、Gアクチンと結合してこれをアクチン重合の場から隔離する作用を有していた。細胞に対する毒性を細胞形態の変化から推定すると、ミカロライドBと比べ明らかに弱く、副作用の少ない抗ウイルス薬開発という観点からは非常に興味が持てる化合物である。抗ウイルス作用は現在検討中であるが、最終的に臨床適用可能な化合物を選択していく上で、非常に有用な化合物であると思われる。感染・増殖実験に用いるイヌジステンパーウイルスにおいて、複製・増殖に関与するウイルス構成蛋白のN、Pの解析を行った。N蛋白についてはdeletion mutantを作製し、核移行シグナル領域を推定した。
(2)アクチン重合阻害薬の抗ウイルス活性に関しては、ウイルス増殖のどのステップで作用しているかを明らかにするために、CDVのN蛋白質の発現の有無を指標に見ているが、予備段階でのデータによれば、蛋白発現は正常に行われており、ウイルスのアセンブリーに影響を与えている可能性が考えられる。
(3)アクチン以外の細胞骨格蛋白質としてチューブリンがあるが、この阻害剤であるコルヒチンがCDV増殖活性を強く抑制することも見出した。この作用は非常に強く、抗ウイルス薬のターゲット分子としてチューブリンが浮上してきたと言える。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
中山 裕之 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
尾崎 博 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】萌芽的研究
【研究期間】1999
【配分額】2,200千円 (直接経費: 2,200千円)