動物ウイルスの持続感染・再活性化機構の解明
【研究分野】応用獣医学
【研究キーワード】
ネコ免疫不全ウイルス / マレックス病ウイルス / 猫ヘルペスウイルス1型 / 犬ジステンバーウイルス / ICP4 / 前初期蛋白 / B95a細胞 / Molt4細胞 / 持続感染 / FIV / 腫瘍原性 / MDV / CDV / H蛋白 / F蛋白 / FHV-1 / CD8 / DNA結合蛋白 / LTR / AP-1 site / ATF site / 再活性化 / 調節遺伝子 / C / EPB結合部位 / TPA処理
【研究成果の概要】
ウイルスの持続感染では、免疫の存在にもかかわらず、ウイルスは体内に潜伏し、宿主の免疫から巧みに逃れる。しかし疫学的、免疫学的、生物学的誘因により、時にはウイルスが再活性化され、その産生が起こり症状が発現する。以下得られた結果を述べる。
1.In vitroにおけるネコ免疫不全ウイルス(FIV)潜伏感染系をFIVを接種した人由来Molt4細胞を用いて確立した。この細胞において、FIVゲノムは感染初期に潜伏状態となり、TPA処理により活性化し、ウイルスを産生することが明らかとなった。
2.FIVのサブタイプA(Petalumaの株)およびサブタイプB(TM2株)のそれぞれを接種したSPF猫を約9年間観察した。全者は感染後8年4ケ月で腹腔内出血で死亡したが、後者は現在でも(9年以上)生存している。この結果、FIVの持続感染の場合、発病を左右する因子としてはウイルスのサブタイプ間の病原性の強弱並びに飼育環境下の差(例えば他の病原体に暴露されない場所)などが重要であると考られた。
3.マレックス病ウイルス(MDV)は血清学的、遺伝学的に3つに分けられ、全て持続感染する。MDV-1は腫瘍原性を有するのに対して、MDV-2は非腫瘍原性である。持続感染並びに腫瘍原性の機構を遺伝子レベルで明らかにするために、MDV-2遺伝子を解析し、その90%以上を決定した。
4.猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)の潜伏感染から再活性化する際に、最初に転写・翻訳される前初期蛋白ICP4をコードする遺伝子の同定を行い、この遺伝子の転写は2つのブロ-モーターにより制御されていることが示された。また、この2つのブロ-モーターの間には転写に抑制的に作用する繰り返し配列が存在した。
5.犬ジステンバーウイルス(CDV)・Yananka株を持続感染させたB95a細胞から回収したウイルスは感染性を持つものの、CPEや、細胞死を起こさない変異株であり、このウイルス株をYanaka-BP株と命名した。Yanaka-BP株のFおよびH蛋白の大きさはYananka株と同じであったが、F蛋白の塩基配列解析により、in vitroでの開始コドンと考えられている3番目のATGコドンがATAに変異していた。
【研究代表者】