金融危機後の韓国における地方都市および農村の社会変動
【研究分野】人文地理学
【研究キーワード】
韓国 / 地方都市 / 農村 / 社会変動 / 金融危機 / 農村社会 / 人口動態 / インフォーマル・セクター
【研究成果の概要】
1.地方都市では金融危機後、全国展開する企業の支店・支所の廃止や再編が行われた。その結果、韓国の都市システムにおいてソウルの地位が以前にもまして上昇した。逆に地方都市は相対的に地位が低下した。
2.交通ネットワークから見ると、金融危機による地方都市への影響ははっきりしない。バス交通と鉄道交通、道路網のネットワークは、高速道路やKTXなどの整備によって、地方都市間のアクセスが最近20年間で格段に改善された。
3.大邱の労働市場は、繊維産地であるため輸出依存度が高く金融危機の影響を強く受けた。事業所規模が縮小し、男性ブルーカラーでは正規職から非正規職への転換が進んだ。しかし大邱繊維産地では、こうした影響は女性生産職従事者の減少となって現れた。これは、金融危機への対応はコスト削減が主であって、高付加価値への産業構造の転換が進んでいないことを示していることが明らかとなった。
4.農村への工業立地が金融危機後に進んだが、その影響はかなり断片的である。
5.農村における産地形成は、高度成長期における都市市場の成立を契機としていた。金融危機によって都市から帰農者が一時的に増えたが、全体としてみればそれほど大きいものではない。
6.地方自治体主導の地域振興策は、金融危機後にさらに活発となったが、これは1995年の地方自治制の導入や中央-地方間の税配分制度の見直しと切り離して考えることはできない。
【研究代表者】