農業政策の国際比較に関する数量経済学的研究
【研究分野】農業経済学
【研究キーワード】
農業政策 / 農産物貿易 / 輸出補助金 / コメ輸出国 / 公的分配システム / 国際比較分析 / WTOと農産物貿易自由化 / 農産物の価格弾力性 / 国際貿易 / 国際比較 / 部分均衡分析 / PEMモデル
【研究成果の概要】
ある国の農業政策を分析する場合、その影響が国内で完結することは稀であり、国際農産物市場との関係を考察することが必要となる。本研究は、先進国および途上国から構成される国際農産物市場と、そこに参加する国々の国内農業政策との相互依存関係を分析した研究成果である。具体的には、以下の事例に関して研究を行った。
(1)経済自由化が進展する下で、農産物貿易の障壁を取り除いた場合の影響を分析した。複数の市場不完全性が存在する場合では、自由化が必ずしも厚生水準を改善させるわけではない点を明らかにした。(2)EUの砂糖輸出補助金を取り上げ、WTOにおける紛争処理と国際市場に与える影響の問題を分析した。また、多くの農産物において国内農業政策が輸出促進的な役割を果たす可能性を論じている。(3)アジア地域のコメ輸出国(タイ、インド)の農業政策をレビューし、国内政策と国際市場との相互依存関係を考察した。インドにおける穀物の公的分配システムは、貧困層の穀物確保と生産者保護の二面から理解することができ、どちらの目的でも、国内価格の下方硬直性をもたらすことを明らかにした。国際価格の下落期において、インドからの穀物輸出が増大する理由を明らかにしている。一方、タイでは経済発展に伴って農業部門が保護の対象になりつつあり、その傾向は国際価格の動向にも規定されていることを指摘した。(4)国際農産物市場に対する我が国からの輸出可能性を、畜産物を対象として試論的に展開した。(5)最後に、アジア諸国の農産物に関する各種弾力性パラメータを既存研究等に基づき整理した。資料的な価値を持つと同時に、今後の分析での活用が期待される。
各研究は個別の事例を分析したものであるが、理論的・実証的な分析を通じて、国内農業政策の影響を理解するためには、国際市場との相互依存関係を十分考慮しなければならないことを明らかにした。
【研究代表者】