脳死・臓器移植に関する比較宗教学的研究
【研究分野】宗教学
【研究キーワード】
脳死 / 臓器移植 / クローン技術 / ヒト胚性幹細胞 / エンハンスメント / 宗教文化 / スピリチュアリティ / <いのち>の尊厳 / 死 / ターミナルケア / スピリチュアルケア / インハーンスメント / 遺伝子治療 / 新生児集中治療 / 生命倫理の日米比較 / ヒトES細胞 / 生命倫理 / 再生医療 / 幹細胞 / 国際宗教学宗教史学会 / 死生観 / スリランカ / インド / いのち / 人胚研究 / クローン / 人工生殖 / 生命科学
【研究成果の概要】
平成14年度〜平成17年度に科学研究費補助金基盤研究B(1)の助成を受けて実施した「脳死・臓器移植に関する比較宗教学的研究」の成果について報告する。本研究に関わった研究者チームの通称である「<いのち>の研究会」では、当初、脳死・臓器移植に焦点を当てて研究を推進し、香港、シンガポール、フィリピン、インド、スリランカ、アメリカなどにおいて、積極的なフィールドワークを展開した。それら異なった宗教文化をもつ国々における海外調査によって学び得た知識と体験は、じつに貴重なものであった。
しかし世界の生命倫理研究の趨勢から、脳死・臓器移植に加えて、クローン技術、人胚性幹細胞の再生利用、人工生殖、安楽死と尊厳死、人間改造など、広く生命倫理全般に関わる問題を扱うことが有意義であるとの見解に達し、各メンバーがその方針に沿って、それぞれの研究を推進した。
「<いのち>の研究会」の強みは、宗教学、医療、法医学、哲学、人類学など異なった分野を専門とする学者が学際的な見地から活発に意見交換することによって、偏りのない生命倫理を模索したことである。それぞれが学会や講演などにおいて意欲的に成果発表をしたことは言うまでもないが、第一線で活躍する海外の学者や日本国内の臨床医も、積極的に研究会に招くことによって、非常に含蓄のある議論が実現できた。
とくに2003年10月29日に東京の学士会館で開催した<いのち>のワークショップ『生命科学とスピリチュアリティー:生命倫理への新たなアプローチ』は、内外メディアの注目を集め、三百人以上の聴衆が参加することになった。このワークショップのために招いたアメリカのブッシュ大統領生命倫理諮問委員会メンバーのウィリアム・ハールバット・スタンフォード大学教授と公私両面において意見交換の場をもつことができたことは、特筆に値する。
科研費助成による本研究は、一応終止符を打つことになったが、「<いのち>の研究会」全員が、さらなる研究発展のために共同することを約している。それは、われわれが欧米先進国から導入された生命倫理を鵜呑みにするのではなく、アジア文化の中で育まれた固有の生命観に考慮を加えながら、商業主義に冒されず、しかも普遍性をもつ新しい生命倫理を樹立し、それを社会に向けて発信していくことを念願としているからである
【研究代表者】