農業水利改革の貿易・資源・環境へ与える影響に関する比較制度分析
【研究分野】農業経済学
【研究キーワード】
農業水利 / 多面的機能 / 共同体 / 農村環境 / 資源保全 / 水利権 / 貿易政策 / 中国 / 比較制度分析 / 法社会学 / 環境保全 / 市場化 / 渇水
【研究成果の概要】
本研究では、農業の生産資源の中で特異な地位をしめる農業用水の資本形成と利用・維持管理のモデルを構築し、農業水利制度の再編(農業水利改革)が農産物貿易、農村資源管理、農村環境に与える影響の分析を試みた。具体的な政策スキームとして2007年度に開始した農地・水・環境保全向上対策を取り上げ、多面的機能論の視角から農業水利資源管理および農業環境保全上の機能について検討を行った。また現地調査を日本、中国、オーストラリアで行い、以下の課題に焦点を当てた。
1.日本:四国・香川用水とその中下流部に位置する香川県内の満濃池ならびに三郎池のため池システムを現地調査した。システムに埋め込まれた共同体ルールの展開過程と固着性を検討した。
2.中国:雲南省での調査において、楚雄彝族自治州では少数民族集落で森林の水源涵養から農業利用まで受益者の下でシステムが運営されている原初的水利ガバナンス構造を検討し、農村資源管理における非経済的社会的規律の意義を確認した。また昆明市官渡区では急速な経済成長による農村資源利用の変化と課題を検討し、その中で「汚染」が看過することできない重要な問題であることを指摘して、その社会的経済的影響を検証した。
3.豪州:ニューサウスウエールズ州のマレー灌漑会社の急進的な水利制度改革の実態調査を行って、期間取引(年単位水量取引)、恒久取引(水利権取引)、水利権価格オークションの地域農業への影響と課題を明らかにした。
【研究代表者】