経済発展のタイミングと福祉国家の多様性
【研究キーワード】
福祉国家 / 経済発展 / フォーディズム / 政党システム / アジア / ヨーロッパ
【研究成果の概要】
本研究は、先行して発展を遂げた欧州の国々とアジア地域の後発国・新興国との双方を含む比較分析により、経済発展のタイミングが福祉国家の性質に及ぼす影響を明らかにするものである。具体的には、①経済発展の時期の違いがもたらす福祉の制度化への影響、②公的な福祉の範囲外で起こる社会的な問題への各国の対応、の二点を明らかにすることを目指している。
2021年度は、先行研究を精査し当該分野における本研究の位置づけを確かなものとするとともに、上記の二つの課題に対する基礎的な調査、分析を開始した。①の課題については、統計的なデータを用いつつ、主に政治的な構造の違いに注目した分析を行った。その結果、政党システムの対立関係において、福祉制度に関係する争点が重要視されるか否かが、先行する福祉国家と新興国とで異なっていることが明らかとなった。②の課題については、該当分野の専門家を交えた研究会での意見交換や関連文献の調査などを通じ、各国の福祉をめぐる現状の整理を行った。これらを通じ、先行国とは異なる新興国における福祉の在り方が徐々に明らかになってきた。
ここまでの研究成果は、経済発展のタイミングのもたらす福祉国家形成の差異を整理する上で必要となる知見を与えるものである。これは、欧州を主とする先行国の経験に基づき構築されてきた福祉国家論の理論的視座を新興国に拡大することにつながる成果であり、この点において本研究は高い学術的重要性を有するものであるといえる。
【研究代表者】