西洋中世における境界地域の統治システムに関する比較史的研究
【研究キーワード】
政治 / 境域 / ガバナンス / 中世 / ヨーロッパ / 統治 / 地中海 / ビザンツ / 聖界 / 西洋中世 / 統治システム / 境界地域 / 異文化接触 / 国家 / 比較 / 制度 / 比較史
【研究成果の概要】
昨年度に引き続き本年度も、コロナウイルス感染拡大のため対面の会議などを開催することは困難であったが、研究代表者並びに研究分担者は、研究計画に従ってそれぞれの調査を進めた。加えて、オンラインを通じた研究会並びに共同研究の成果を刊行した。
代表者並びに分担者が執筆する研究成果は数多く刊行された。代表者の高山博は監訳者として、分担者の藤崎衛は共訳者として、D・アブラフィア(著)『地中海と人間―原始・古代から現代まで』を刊行し、海域という観点を通じて国家や統治のあり方を再考すべき視点が共有された。分担者の加藤玄は『ジャンヌ・ダルクと百年戦争』でジャンヌダルクを通じて中世後期フランスの統治システムを、菊地はHerrschaft, Delegation …で、初期中世のフランク王国統治における中央と地方との関係を特徴づけた。
特記すべきは、研究計画の中間報告である高山博・亀長洋子編『中世ヨーロッパの政治的結合体』を刊行したことである。本論集は、統治システムという観点から、中世ヨーロッパを「北欧・イングランド世界の政治的結合体」「大陸ヨーロッパ世界の政治的結合体」「教会世界の政治的結合体」「南ヨーロッパ世界の政治的結合体」「ビザンツ世界の政治的結合体」という五つのパートに分け、各地域の特徴を比較することで、中世ヨーロッパの統治システム全体を明らかにする成果である。研究代表者による総論、分担者によるパートごとの総括5本、そして研究協力者も含めた個別論文22本から構成されている。その際、①現在の大国にフォーカスする従来の研究では等閑視されがちであった北欧、東欧、南欧、アルメニア、黒海のような辺境への注目、②教皇庁や修道会のように国境や言語圏を越えた広域ネットワークへの着目、③統治するものと統治されるものの相互作用から生成する独特の政治文化の抽出といった本科研の目的に沿った成果を得た。
【研究代表者】