暖帯林における生物の種及び遺伝的多様性の総合的評価
【研究分野】林学
【研究キーワード】
暖帯林 / 種組成 / 二次林 / 生物多様性 / 遺伝的多様性 / 菌類 / モミ / 土壌動物 / ギャップ / 硬質担子菌 / 階層構造 / 菌根菌 / 木本植物
【研究成果の概要】
暖帯林は、遷移の過程で草本から落葉広葉樹を経て、モミなどの針葉樹を含む常緑広葉樹へと多様な植生変化を呈し、その間にさまざまな生物種の生存を支えており、生物多様性の研究に格好のフィールドである。本研究は、日本の暖帯林における生物相の多様性の実態を、異なる地域に設定された固定プロットを中心に、種多様性および種内の遺伝的多様性の観点から明らかにし、森林の保有する生物の多様性を総合的に把握するとともに、同所的に生息する異種生物間相互の関係を考究することを目指して実施した。
具体的なフィールドとして東京大学大学院農学生命科学研究科附属科学の森教育研究センター千葉演習林及び同樹芸研究所の森林をフィールドとして、森林構成生物のグループとして、樹木、草本植物、昆虫、土壌動物、菌類をとりあげ、それぞれの種多様性の実態を把握した。また、モミについては遺伝的多様性の評価を試みた。
千葉演習林では、暖帯林の針葉樹の代表であるモミについて、モミ林の成立過程について長期プロットを対象に明らかにした。また、その遺伝的多様性維持機構の解明のため交配の実態解明及びアロザイム遺伝子座の探索を行い、個体間距離と種子の有胚率との関係を明らかにした。一方、樹芸研究所では、かつての薪炭林が放棄されたあとの二次林がどのような種多様性を有しているかについて、木本、草本、シダ植物等について、施業の経歴、スダジイ二次林の林分構造などを調査することで明らかにした。さらに、暖帯林の保有する多様性の他の面として菌類相、地表徘徊性甲虫、大型土壌動物などについても存在状況を明らかにした。
【研究代表者】