イネ澱粉枝作り酵素アイソザイムの各組織における機能と相補作用の解析
【研究キーワード】
イネ / 葉鞘 / 澱粉 / アミロペクチン / アミロース / 枝作り酵素 / 枝切り酵素
【研究成果の概要】
本研究の目的は、3種類のイネ澱粉枝作り酵素(Branching Enzyme; BEI, BEIIa, BEIIb)の 各組織における役割を明確にすることである。3種類のBEは、組織による発現強度・相互作用する酵素・好む基質の構造・形成する枝の長さが異なる。胚乳におけるBEの機能と相補作用は明確になってきたが、胚乳以外の組織におけるBEアイソザイムの機能分担は不明である。
本研究では、特定のBEが欠失するとどのような構造の澱粉を蓄積し、植物体にどのような影響を与えるかを明確にすることを目的として、2021年度は各BEアイソザイムが欠失したシングル変異体を用いて、1)植物体の生育調査、2)光合成速度の測定、3)葉鞘澱粉の消化性を明らかにした。
1)生育調査:be2bシングル変異体は幼苗期の生育が遅く、発芽15日後の新鮮重量が野生型やbe1・be2aシングル変異体の約50%であった。また、育苗中のbe2b胚乳には、野生型やbe1・be2aシングル変異体と比較して約100倍多く澱粉が残存していた。胚のみを培養した場合には、系統間での初期成育に有意な差は見られず、いずれの系統も出穂期には生育に大きな差は見られなくなった。これらのことから、育苗時のエネルギー源として使いやすい構造の澱粉を胚乳に蓄積するために、BEIIbが重要であることが明らかになった。
2)光合成速度:暗順化後の最上位完全展開葉を用いて光合成速度を測定した。その結果、be2aシングル変異体は、野生型と比較して気孔が良く開き、活発に光合成をする傾向が見られた。
3)葉鞘澱粉の消化性:葉鞘から精製澱粉を調製し、グルコアミラーゼで分解したところ、be2aの葉鞘澱粉は他の系統と比較して極めて消化しにくいことが明確になり、BEIIaが葉鞘のアミロペクチン合成において主要な働きを担うことが明確になった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
森田 隆太郎 | 東京大学 | 大学院農学生命科学研究科(農学部) | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)