結晶場の効果を利用した反応設計
【研究分野】結晶学
【研究キーワード】
分子設計 / X線結晶構造 / 不斉反応 / 表面構造 / 包接化合物 / 分子力場 / 固相反応 / 反応立体経路
【研究成果の概要】
本研究は, 結晶における分子間相互作用と反応の関係を新しい物質の開発, 設計に応用することを目的として, 60年度から3年間にわたって行われた. 結晶, 表面における構造と相互作用の関連についてX線回折, 赤外分光, 超高圧電子顕微鏡などの物理化学的実験手段, 有機化学的な立体選択的反応設計, 理論化学的な構造予測などの面から研究を行った. 毎年公開発表会を開催し活発な討論を行った. 各分担課題の研究成果は以下の通りである.
1.固体-固体反応による錯体形成現象, 結晶場での不斉認識を利用する光学分割, 不斉選択的反応を行ない大きな成果を上げた(戸田). コバロキシム錯体の異性化反応, 固相光異性化反応と水素結合の関係, 不斉化合物の選択的生成過程などについてX線結晶構造解析により明らかにした(大橋).
2.シクロデキストンやα-ビナフトールなどの包接化合物における立体選択的取り込みについてX線結晶構造解析によって明らかにした(藤原). モルデナイトなどの吸着特性をX線回折や赤外分光によって検討した(伊藤).
3.薄膜上の固相反応の動的過程をペニング分光法によって解析した(原田)ポリフタロシアニンなどの薄膜の多形や機能性の関連を超高圧電顕によって解析した(小林).
4.放射線固相重合と単体化合物の結晶構造の関係, 酵素蛋白の分子相関(甲斐). 多次元分子性電導体の合成と構造解析(中筋)硫黄原子の原子価拡張性と反応の立体経路及び硫黄の関与する分子内分子間相互作用(岩崎)などについて研究を行った.
5.結晶構造解析データと分子力場計算による反応設計を行った(大沢). 基本的有機化合物の結合概念や電子構造について量子化学的検討を行った(細谷).
結晶場の規制を反応に利用することはクリスタルエンジニアニングとして今後益々発展する分野である. また, 反応の動的過程のX線回折による解析が今後の重要な課題である.
【研究代表者】