d8金属錯体の金属-金属間相互作用を利用する光触媒的メタン変換反応の開発
【研究キーワード】
光触媒反応 / 金属ラジカル / ハロゲン化 / パラジウム錯体 / 可視光 / 錯体化学 / 有機金属錯体 / メタン
【研究成果の概要】
本研究は、π共役系配位子を有するHalf-lantern型d8-d8二核錯体のMMLCT(Metal-Metal-to-Ligand Charge-Transfer)励起状態を利用した、新しい光触媒的分子変換反応の開発を目的とする。昨年度は、芳香族炭化水素基質の光触媒的C(sp2)-H結合ハロゲン化反応の条件最適化および基質一般性調査を行った。この結果を踏まえ、本年度はさらに高難度な光触媒的C(sp3)-H結合ハロゲン化反応への展開を目指し、新たにC(sp3)-H結合を持つ炭化水素基質を用いる検討に取り組んだ。
まず、酢酸パラジウム(II)をパラジウム源、およびハロゲン化炭素をハロゲン源に用い、可視光照射による触媒的ハロゲン化反応を検討した。種々のC(sp3)-H結合を有する炭化水素基質について検討した結果、特に8-メチルキノリンを用いた場合に標的とするC(sp3)-H結合ハロゲン化反応が進行することを見出した。対照実験により、本触媒反応の進行には、酢酸パラジウム(II)、ハロゲン化炭化水素、および可視光が必須であることが確かめられた。種々の実験および理論計算より、本反応は、(i)8-メチルキノリンのシクロメタル化によるHalf-lantern型二核Pd(II)錯体の生成、(ii)同錯体の可視光励起によるハロゲン化炭化水素からのハロゲン引き抜き、(iii)二核Pd(III)-X (X = halogen) 錯体からのC-X結合形成を伴う還元的脱離、および(iv)ハロゲン化体の遊離と新たな基質のシクロメタル化による二核Pd(II)錯体の再生により進行することが示唆された。以上の検討より、Half-lantern型二核Pd(II)錯体による光化学的ハロゲン引き抜きが、炭化水素基質の触媒的C(sp3)-H結合官能基化反応にも適用可能であることが明らかとなった。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)