ベトナム産熱帯有用植物に寄生するさび病菌の多様性解明
【研究キーワード】
サビキン / ベトナム / 熱帯植物 / 東南アジア / インベントリー / さび病 / コーヒーノキ葉さび病 / Hemileia vastatrix / ITS rDNA / 集団遺伝学 / 遺伝的多様性 / さび病菌 / 熱帯有用植物 / 生物多様性 / アグロフォレストリー
【研究成果の概要】
すでに収集・保存しているベトナム北部、中部、南部のコーヒープランテーション産のコーヒーさび病菌の標本を供試し、コーヒーノキ(Coffea)とその近縁植物を宿主とするサビキンであるHemileia属サビキンの種の特定を行うとともに、遺伝子解析によるコーヒーさび病菌の種内変異について調査を行った。
その結果、ベトナムの主要コーヒー栽培地域では、広くさび病が発生していること、さび病の原因サビキン種はHemileia vastatrixであることが形態および分子情報により確認された。また本種は、さび病抵抗性品種とされるカチモールにも進感染しさび病を起こしていることが明らかとなった。
核リボゾームDNA内部転写スペーサー領域の塩基配列の違いに基づいたハプロタイプを識別し、タイおよび公開データベースを用いて南米各国で発生したサビキンのデータも加えて分子系統学・集団遺伝学的調査を行った。
その結果、ベトナムのH. vastatrix集団から36のハプロタイプを検出し、より祖先的なハプロタイプとそこからより最近に派生したと考えられるハプロタイプの分布状況から、ベトナムでの本病の発生がコーヒーの主要生産地である北西部を起源として南部へ広がったことを初めて明らかにした。さらに、現在ベトナムでのコーヒーの主要生産地の1つである南部の中央高原を起源としたサビキン集団が、ベトナム南部でさらに拡大している可能性が示された。この中央高原には、1900年代初めにロバスタ種が導入され、南部へ広がったが、この導入と同時に新たなサビキン集団が移入したことが示唆された。
【研究代表者】