イネ小胞子に潜在する個体分化能と倍数化能を活用した育種基盤の新構築
【研究キーワード】
イネ / 小胞子 / 個体分化能 / 倍数化能 / 育種 / 葯培養 / イネ種間雑種 / 非還元減数分裂 / 雑種不稔性 / 育種基盤
【研究成果の概要】
本研究は、1)小胞子から個体分化を誘導するメカニズム、2)イネ小胞子から効率的に個体を再生するシステムの構築、3)イネ種間雑種の葯培養個体で誘導される倍数性の発生メカニズムの解明、4)イネ種間雑種の葯培養個体によって雑種不稔性を回避する遺伝機構の解析、5)葯培養個体から生じた倍数体種間雑種による新しい育種材料の開発、の5つの問題から構成されている。2020年度は主に2)と4)について進展があった。2)について本研究では、葯から抽出した小胞子を直接培養することによって効率的に植物体再生を行うことが可能かどうかをキタアケを用いて行った。培地を検討するため、葯より抽出した小胞子に対してN6液体培地とすべての成分を10倍希釈した1/10 N6液体培地を用いて培養を行った。興味深いことに希釈培地でもカルス形成が確認された。誘導されたカルスに対して再分化処理を行い、1/10 N6液体培地に由来するカルスにおいても植物体が再生された。カルス形成率に着目すると培地の濃度によるカルス形成率への影響はなかった。しかし、培養過程にある小胞子生存率は1/10 N6培地中で大きく低下することが確認された。このことから、希釈培地では、カルス形成に関与しない小胞子が死滅したことが考えられる。両培地において葯に由来するカルスは、360葯から280個以上誘導された。これらカルスの再分化実験では、1/10 N6培地に由来するカルスは、N6液体培地に由来するカルスの再分化率を大きく上回った(1/10 N6液体培地:21%、N6液体培地12%)。さらに再分化後の馴化段階での枯死率も1/10 N6培地に由来の個体が低く安定的だった(1/10N6液体培地: 6%、 N6液体培地:22%)。したがって、カルス誘導培地の違いにより、再分化の効率が異なることが示された。
【研究代表者】