生体の高次構造と機能の解析を目的とした蛍光実体顕微鏡の開発
【研究分野】植物生理
【研究キーワード】
画像処理 / クロロフィル蛍光 / 蛍光測定 / 光合成 / 細胞内pH / 細胞膜電位 / 実体顕微鏡 / 植物組織
【研究成果の概要】
生物学領域において、蛍光測定法は通常の光学的測定・観察のみでは得られない種々の情報を与える。特に蛍光顕微鏡と各種の蛍光物質を用いた研究は、細胞内構造や、細胞内pH分布・Ca2+分布という物理的性質の変化などを生きたままで観察することを可能にした。植物ではクロロフィルの自家蛍光を利用して細胞内葉緑体のエネルギー状態を明らかにする方法も開発されている。本計画は、ビデオカメラで画像を取り組むことにより、実体顕微鏡レベルの広視野に蛍光顕微鏡としての機能をつけ加え、現在細胞レベルの研究のために開発されてきた各種蛍光測定法を利用して、多細胞体の組織・器官における生命活動を、個々の細胞と同様新しい側面から明らかにしようというものである。平成5年度において、実体顕微鏡等価の広視野像をビデオカメラを通してコンピューターに取り込む装置を設計・開発した。6年度においては予備実験に基づいて次の点に改良を加えていった。
(1)クロロフィルを飽和光で照射するため、励起光対照のためのキセノンランプ部に改良を加え、さらに定常光照射のためにハロゲンランプでの照射も可能にした。また、サンプル下部から透過光で観察する装置をつけ加えた。
(2)照射装置にコンピューターからコントロール可能なフィルター交換装置をとりつけた。
(3)ビデオカメラの自動作動範囲を広げるため、カメラコントロール装置に改良を加えた。
(4)蛍光画像処理のためのプログラムの開発を行った。
(5)本装置は励起光照射部に様々な工夫を行っているため、本研究が目的とする広領域蛍光画像用としてばかりではなく、通常の顕微鏡像においても新たな知見を得ることが可能である。そこで、照射装置からの光誘導をすべてライトガイドを用いて行うように設計を変更し、通常の顕微鏡への応用可能性を広げた。
(6)改良途中の装置を用いて、緑葉クロロフィルの自家蛍光の誘導現象及びノンフォトケミカルクエンチングの測定の可能性を確認した。
装置は、現在尚改良途上にあるが、本研究期間において、当初の目的のために必要な部分はほぼ完成した。今後は、各実験テーマに基づいて改良を加えることと、それぞれの実験テーマに応じた、装置使用のためのノウハウを蓄積していく必要があると思われる。
【研究代表者】