品種間差異を利用したハスの花の発熱・恒温性機能の解明
【研究キーワード】
送粉生態系 / 花の発熱 / 画像解析 / 自動撮影 / 深層学習 / 物体識別 / 画像処理 / 恒温植物 / 訪花昆虫 / 自動撮影カメラ / 花托 / 発熱メカニズム
【研究成果の概要】
ハスは、花托と呼ばれる花の中心部分が発熱し、約4日間の開花中30~37度の間に維持される恒温性という機能を持つ。本研究は、東京大学附属生態調和農学機構のハス見本園において複数の品種のハス花を対象に花托の発熱パターンを調べ品種間での形態的及び遺伝的変異を利用して、目的①「ハス花の発熱が訪花昆虫を誘引し結実率を高める」という仮説の検証及び目的②ハス花の発熱・恒温性に関連する遺伝子の同定を行っている。目的①に関しては、発熱器官である花托を切開・切除したハス花と対照となるハス花で訪花昆虫を自動撮影カメラで記録し比較したところ、前者の花は後者の花と比較して昆虫の訪花頻度が大幅に少なくなることが確認された。花托の操作により発熱の程度が低下した結果、訪花昆虫が少なくなったと考えられた。また、頻繁にハスを訪花する昆虫グループやハス結実率に影響を与える昆虫グループを特定した結果を論文にまとめ、国際誌に投稿した。さらに5秒間隔で撮影された画像を利用し、AIによる訪花昆虫の検出及び訪花活動の分析手法の開発を行った。その結果、重要な訪花昆虫であるミツバチの自動検出および訪花活動の分析が可能となった。目的②に関しては、前年度に実施した予備的なトランスクリプトーム解析の結果をふまえ、開花前後の花托温度変化を経時的に記録した。開花1日目(発熱)と開花5日目(非発熱)の花托、および開花1日目の花弁、雄ずい、雌ずいをサンプリングし、RNA-seqによる網羅的発現解析を実施した。その結果、昨年の実験と同様に約25000種類の遺伝子発現が検出され、開花1日目の花托で特異的に発現上昇する遺伝子を921個同定した。このうち、花托の発熱に関与すると考えられるalternative oxidase(AOX), uncoupling proteins(UCPs)の発現変動が確認された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
樋口 洋平 | 東京大学 | 大学院農学生命科学研究科(農学部) | 准教授 | (Kakenデータベース) |
郭 威 | 東京大学 | 大学院農学生命科学研究科(農学部) | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2020-07-30 - 2023-03-31
【配分額】6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)