大規模野外実験による流域スケールでの北方林生態系動態の解明
【研究分野】林学・森林工学
【研究キーワード】
北方林 / 生態系動態 / 流域 / 野外実験 / 生物多様体 / 水分動態 / 物質動態 / 生物多様性 / 流域スケール / 流域スケ
【研究成果の概要】
本研究は、気候条件の異なる複数の小流域と観測サイトを対象に、森林伐採などの大規模野外操作実験を行い、生物多様性と生態系機能との関連のメカニズムを解明するとともに、長期流域観測のモデルケースを創出しようとしたものである。
多雪気候下にある雨竜研究林においては、9小流域を対象に、森林伐採と地表処理(ササ植生の除去)を実施し、無施業の対象流域も含めたモニタリングの継続・解析をすすめた。(1)森林伐採により、夏期渇水流量の増加や水温低下が確認された。また、(2)渓流水中の夏期NO3-N濃度は、樹木の伐採だけでは変化せず、地表処理をともなうことによって増加する状況が把握された。(3)渓流中の無脊椎動物群集に対しても、森林伐採や地表処理が、食餌量供給の増大として、多様性や個体数の増加をおよぼす状況も把握された。
寡雪気候下にある苫小牧研究林においては、選択伐採による純林の創出と窒素施肥と組み合わせによる、96サイトで観測をおこなった。(1)フェノロジーの早い林床植物が栄養塩制限、遅い植物が光制限になる傾向があることが把握された。(2)施肥は被食量を高める方向に・伐採は被食量を低める方向に働くこと、伐採と施肥の双方がリター分解速度を低下させる方向に働くことが明らかになった。(3)生産性は光と栄養塩勾配に強い影響を受けるが、多様性は概乱履歴に強い影響を受けることなどが明らかになった。
ササ群落は流域の水分動態や物質動態に大きな影響(緩衝機能)をもつことが明らかになり、ササ群落の乏しい寡雪地帯と高密度のササ群落が存在する多雪地帯における土地利用や環境保全においては、ササ群落の形態にもとつく検討も必要と考えられた。
なお、これらの試験流域や実験サイトをふくむ研究林は、全てJaLTERに登録されるなど、長期モニタリングサイトとして整備することができた。
【研究代表者】