鉄栄養関連タンパク質の細胞内微細局在解析
【研究分野】植物栄養学・土壌学
【研究キーワード】
鉄欠乏 / イネ科植物 / オオムギ / ムギネ酸類 / 免疫組織化学 / ムギネ酸顆粒 / ニコチアナミン合成酵素 / ニコチアナミンアミノ基転移酵素 / 鉄欠乏耐性 / 植物の鉄栄養 / 細胞化学 / ムギネ酸 / イネ / 形質転換植物 / Ids3
【研究成果の概要】
イネ科植物の鉄獲得機構の主要な構成要因はムギネ酸類の合成と分泌である.ムギネ酸類生合成経路上の酵素のうち,S-アデノシルメチオニン3分子からニコチアナミンを生成するニコチアナミン合成酵素(NAS)と,ニコチアナミンからケト中間体を生成するニコチアナミンアミノ基転移酵素(NAAT)は,鉄欠乏によって強く誘導される.この両酵素タンパク質を鉄欠乏オオムギ根より精製し,これらをコードする遺伝子を単離した.NASは7個,NAATは2個のクローンが得られた.NAS,NAAT遺伝子を大腸菌で大量に発現させ,得られたタンパク質から両酵素のポリクローナル抗体を作成した.この抗体を用いて,光学顕微鏡レベルと電子顕微鏡レベルで,両酵素の鉄欠乏オオムギ根における組織内局在と細胞内局在を調べた.その結果,NASとNAATの両酵素は鉄欠乏オオムギ根に特異的に現れる顆粒に存在することが明らかになった.さらに,35Sプロモーターの下流にこの遺伝子とクラゲ緑色タンパク質をつないで,コムギの培養細胞に発現させるとこのタンパク質は顆粒状の構造に局在することが示された.この顆粒の限界膜にはリボゾームが付いており,粗面小胞体由来と考えられる.NAATがこの顆粒に局在することは,NAATタンパク質のN末端側に小胞体移行のためのシグナルペプチドが存在する結果とも一致した.ムギネ酸の分泌は日周性を示すが,ムギネ酸が分泌される日の出前にはこの顆粒は大きく膨らんでおり,分泌後には小さくなることから,ムギネ酸類が分泌されるまでの間ここに貯蔵されると想定されていた.ムギネ酸類合成系の主要な2つの酵素が共にこの顆粒に存在することが明らかになったことにより,この顆粒がムギネ酸類合成の場であることが証明された.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
中西 啓仁 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】11,500千円 (直接経費: 11,500千円)