稲の稈における細胞壁構成物質の再移動の分子機構
【研究分野】作物学
【研究キーワード】
水稲 / 稈 / ヘミセルロース / 挫折抵抗 / 登熟期 / グルカナーゼ / イネ / 倒伏 / 細胞壁
【研究成果の概要】
本研究においては水稲の桿の物理的強度が登熟期に急激に弱くなるという現象の生理および分子機構を解明しようとした。3年間にわたる研究の結果、次のような成果が得られた。
(1) 水稲の桿の物理的強度と桿を構成する細胞のうち、特に、柔細胞の細胞壁が薄くなるという形態的、構造的変化の間に明瞭な関係を認めた。
(2) この関係には明瞭な品種間差が見られ、登熟期に桿から穂への物質の移動が大きい品神で桿強度の低下が大きかった。
(3) この物質移動の原因となる具体的物質を検討したところヘミセルロース、ベクチンの変化量が大きいことを明らかにしたが、なかでも存在量の大きな前者が桿強度の変化と対応している可能性が示された。
(4) そこで、ヘミセルロースを構成する多糖のうちグルカン、キシログルカン、アラビノキシランなどのうち、どの多糖類が変動しているかを検討した粘果、(1-3.1-4)-β-グルカンおよびアラビノキシランが変動量の大きいことを明らかにした。
(5) このうち、(1-3.1-4)-β-グルカンを分解するグルカナーゼ遺伝子の発現状況をノーザーンハイブリダイゼーション法により検討したところ桿強度の低下に対応してその発現が強くなることを認めた。
なお、量的に多いアラビノキシランの分解酵素であるキシラナーゼ遺伝子の発現あるいは時期、品種による発現の変動と桿強度、遺伝子発現の関係についてはさらに検討を継続する必要があることが指摘された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
根本 圭介 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1996 - 1998
【配分額】7,900千円 (直接経費: 7,900千円)