X線結晶解析に基づく白麹菌キシラナーゼの好酸性・耐酸性機構の解明
【研究分野】応用微生物学・応用生物化学
【研究キーワード】
キシラナーゼ / 白麹菌 / X線結晶構造解析 / タンパク質工学 / 好酸性 / 耐酸性
【研究成果の概要】
キシラナーゼCの至適pHが大幅に上昇した変異体であるD37NのX線結晶構造解析を行った。その結果、Asn37の側鎖は野生型のAsp側鎖に比べて電子密度が不明瞭になっており、酸・塩基触媒であるGlu170との水素結合が弱くなっていることが示唆された。これは、これまで筆者らが示したキシラナーゼCの好酸性機構を支持するものである。
キシラナーゼCの基質結合クレフトの入り口に存在するGlu118の変異体と、D37Nを組み合わせた各種変異体の活性のpH依存性を測定した結果、E118QとE118Aで酸性域の活性が60〜70%程度に低下し、全ての変異体で中性域の活性が120〜230%程度に上昇した。従って、Glu118はキシラナーゼCの好酸性に寄与していることが分かった。
キシラナーゼCの基質結合クレフトに存在するTyr10、Phe131、Trp172の各種変異体酵素の活性のpH依存性を測定した結果、Y10F,F131W以外の変異体では、全てのpH域に渡って活性が90〜40%程度に低下したことから、これらの変異は酵素活性そのものに悪影響を与えていると考えられた。しかし、Y10Fでは酸性域のみで活性が90〜30%程度に低下しており、わずかヒドロキシル基一つの違いが本酵素の好酸性に寄与していることが分かった。F131Wでは、興味深いことに、酸性域にある最大活性が1.5倍に上昇していた。131位の側鎖はサイズの大きいTrpの方が周囲の疎水的な環境を維持するために適していると考えられる。
キシラナーゼBのAsn43は、キシラナーゼCのAsp37に相当する。これをAspに置換した変異体の活性のpH依存性を測定した結果、中性域のみで活性が80〜30%程度に低下しており、中性キシラナーゼでも酸性キシラナーゼと同様にこの残基が活性のpH依存性を決定していることが明らかになった。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1999 - 2000
【配分額】2,300千円 (直接経費: 2,300千円)