微生物モデルによる動物型細胞質分裂の分子機構解明とその応用
【研究分野】応用微生物学
【研究キーワード】
微生物 / 細胞質分裂 / 細胞性粘菌 / 細胸性粘菌
【研究成果の概要】
細胞分裂は生命の本質に関わる現象であり、その分子機構解明は、生物学の重要な課題の一つであるとともに、制ガン剤の開発など応用面においても重要である。本研究では、細胞分裂過程のうち細胞質分裂に焦点を絞り、その分子機構解析を行った。細胞質分裂の分子機構は、動物・微生物の細胞と植物細胞で大きく異なるが、本研究は、そのうちヒトなど高等動物の細胞を含む動物型の細胞質分裂を対象とし、細胞壁を持たず高等動物細胞と酷似した様式・機構により分裂する真核微生物、細胞性粘菌の単細胞アメーバをモデルとして行ってきた研究代表者のこれまでの研究の延長上にある。具体的に、研究代表者らが細胞質分裂に関わることを見出したIQGAP様タンパク質GAPA、新規タンパク質D411-2p等の細胞性粘菌のタンパク質分子について、その生理機能、生化学的機能、物理的及び遺伝学的相互作用を、特に細胞骨格との関わりを中心に、細胞骨格を通じて細胞質分裂と関連する他の細胞運動現象への関与も含めて解析することを目的とした。実際には、他の分子も解析したが、早い段階で興味深い結果が出たD411-2pに集中して解析を行った。その結果、第一に、D411-2pが、細胞質分裂同様アクチン細胞骨格の再構築により進行するエンドサイトーシスである貪食作用とマクロピノサイトーシスにも関わることを遺伝子破壊株を用いた解析から明らかにした。第二に、これら二現象でそれぞれ一時的に形成されるFアクチンに富んだ突起であるファゴシティックカップとクラウンにD411-2pが局在することをGFP融合タンパク質を用いて明らかにした。第三に、D411-2pが、やはりアクチン細胞骨格が重要な役割を果たすcAMP走化性運動(細胞遊走)にも関わることを変異株の遊走速度解析から明らかにした。第四に、D411-2pとアクチン系細胞骨格との相互作用を生化学的に明らかにした。第五に、D411-2pの部分断片を用い、Fアクチンとの相互作用及び遺伝的相補性に必要な領域をそれぞれ明らかにした。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2006 - 2007
【配分額】4,010千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 510千円)