リグニン系土壌改良剤の開発に関する基礎研究
【研究分野】林産学
【研究キーワード】
リグニン / 土壌改良剤 / アルミニウムイオン / 酸性土壌 / アルカリ性酸素酸化 / ムコン酸型構造 / 森林 / 金属捕捉 / ラジカルスルホン化 / アルカリ性酵素酸化 / ラジカルスルフォン化
【研究成果の概要】
地球規模で進む森林の荒廃を防止し、再生させるための懸命の努カが世界各地で続けられているが、とりわけ酸性土壌に起因するものは深刻である。このような土壌地帯が熱帯地域に広く拡がっており、その原因の多くが土壌中に一定濃度以上のアルミニウムイオン〈AL)が含まれることによることが指摘されている。健全な土壊においては腐植物質が土壌水中のALの捕捉に重要な役割を果たしていると考えられる。本研究では工業リグニンの化学的改質により、このようなALを効率的に捕捉する機能を有するリグニン系土壌改良剤の開発と、その機能発現機構の解明を目標とした。リグニンの改質方法としては、アルカリ性酸素酸化およびラジカルスルフォン化の両処理を取り上げ、これらの処理によってクラフトリグニン中に芳香核の部分的開裂によるカルボキシル基とスルフォン酸基の導入を図った。得られた処理リグニンはこれらの置換基の導入によって良好な親水性を示した。また、ALによる植物の生育阻害に対する抑止効果を根の伸張生長について検討した。植物としては試料の均一性と再現性の観点から二十日大根を取り上、土壌栽培系および水耕栽培系の両者で検討した結果、いづれの処理リグニンも良好な機能を示した。二十日大根の生育が実質的に不可能なAL濃度5ppm、pH4.5の条件でも、120ppm程度のアルカリ性酸素処理リグニン、を培養液中に添加することによって、対照試料に劣らない生育を示すようになった。また、興味深いことは、ALの存在しない系においても、処理リグニンの存在が生育を促進することである。
処理リグニンの機能発現機構については今後の継続的な検討が必要ではあるが、処理リグニンの存在によって、ALの根表面への吸着が抑制されることを見出した。このことは機能発現の機構を考える上で極めて興味深い事実であると考えている。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
新谷 博幸 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
松本 雄二 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1997 - 1999
【配分額】11,200千円 (直接経費: 11,200千円)