ゲノム情報を応用した栽培技術の作用機構の解明
【研究分野】作物学・雑草学
【研究キーワード】
遺伝子型環境交互作用 / イネ / 組み替え近交系 / 茎数 / 収量構成要素 / 深水栽培 / 補償作用 / QTL / 最高茎数 / 一穂籾数 / 穂数 / 分げつ出現率
【研究成果の概要】
深水栽培が,茎数や茎の太さ,穂の大きさに与える影響を解析するために,アキヒカリ×IRAT109戻し交配由来組換え近交系106系統を宮城大内の水田で慣行法と深水管理で栽培し,生育と収量関連形質を調べた(2004,2005年).また,東北大学では,同組み替え近交系(2006年)と熱研2号×伽耶の組み替え近交系121系統(2004年),亀の尾×Dularの組替え近交系180系統(2005年)をポットで栽培し,生育調査をし,一部,サンプリングし分げつ性等を調査した.
水田での実験では,茎数と穂数の遺伝子型×水管理交互作用について解析した.その結果,分げつ数のQTLには,水管理との交互作用が大きいQTLと交互作用が小さいQTLとがあることが示唆された.さらに深水管理と慣行法での相対値を用いて解析したところ,稈の太さへの補償能力を持つ最高茎数QTLが検出できた.このQTLでは効果が逆方向で,深水栽培により茎数増加が抑制され,それによりイネの茎が太くなるという因果関係を確認することができた.また,同様に,茎の肥大と一穂籾数の増加も関連づけられた.それと同時に,最高茎数QTLとは重ならない稈の太さのQTLが検出され,因果関係によらず深水栽培が直接的に茎を太くする側面もあることが推察された.このことは,茎数の制御と太さの制御とを切り離して管理できる栽培技術開発が可能であることを示している.
さらに,収量に関しては,穂数がQTLレベルで収量と直接関わっていたが,この効果は,年次によって一穂籾数への補償作用を通して相殺されることもあり,このようなことが収量QTLの現れ方の年次変動に関係していることが示された.
このほか,ポット実験から,茎数に関するQTLを確認し,肥大に関する形態的な解析も行った.
【研究代表者】