処方薬の消費者への直接広告に関する研究
【研究分野】応用経済学
【研究キーワード】
医薬品 / 広告 / 規制 / 情報の非対称性 / 産業組織 / 処方 / DTC広告 / 情報 / 経済 / 国際情報交換
【研究成果の概要】
処方薬の消費者向け直接広告(DTC広告)の影響について米国のデータを用い実証分析を行った。米国では、1997年のDTC広告の規制緩和後DTC広告が急増し、その影響について激論が戦わされてきた。先行研究はDTC広告が市場全体のパイを拡大することを示唆するが、患者が医師のもとを訪れた後、DTC広告が更に処方に影響を及ぼすかについては更なる分析が必要である。2006年度は後者に関し、アレルギー鼻炎用薬を取り上げ分析した。個別患者の処方データを用いた離散選択モデルによると、DTC広告が処方に及ぼす影響は限定的であった。一方、医薬品企業が医師向けに行う販促活動(ディーテイリング等)は、処方薬の選択に有意な影響を及ぼした。これらを先行研究とあわせて考えると、DTC広告は薬効クラス全体の需要を増加させるが、薬効クラス内での選択には影響が小さく、公共財的な性格を持つと考えられる。またDTC広告と医師向け販促活動は、処方薬のマーケティングにおいて異なる役割を果たしていると考えられる。
2007年度は、DTC広告が人々の生活習慣に及ぼす影響に関し研究を行った。DTC広告に関する研究は、DTC広告が処方薬の需要に及ぼす影響に集中してきたが、DTC広告が伝える新薬の情報に基づき、消費者が自らの行動様式を合理的に変更する可能性も存在する。この点に関し、生活習慣病(高コレステロール、糖尿病、肥満等)に関するDTC広告を取り上げ、これらが人々の運動習慣を変化させるか定量的に分析した。推定結果から、生活習慣病に関連するDTC広告が、定期的な運動の回数を減少させる効果が認められた。これらは、DTC広告が短期的な医薬品の需要に影響するにとどまらず、人々の生活習慣に影響を及ぼすことでより長期的な影響を持つ可能性を示唆しており、DTC広告が広く国民の健康に及ぼす影響について更に広範な検討・議論が必要と考えられる。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2006 - 2007
【配分額】3,230千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 330千円)