泥炭地高度利用と環境保全の調和のための物質移動システム管理技術に関する研究
【研究分野】農業土木学・農村計画学
【研究キーワード】
泥炭 / 環境保全 / 物質移動 / 透水係数 / 異方性 / N_2Oガス / 水収支 / 透水量係数 / 収縮 / 熱伝導率 / 亜酸化窒素ガス
【研究成果の概要】
本研究の目的は、人間が食糧生産の為に積み重ねて来た土地改良事業において発揮されてきた泥炭地高度利用の諸技術、泥炭地湿原の持つ環境生物資源を維持・保全する技術とが共存し、互いに調和する為に必要な、土地基盤における物質移動システム管理技術を見い出すことである。具体的には、美唄湿原約50haとその周辺に広がる土地改良実施済農耕地における物質移動システムの把握とその適切な管理方式の確立を目標とした。
その結果、高位泥炭湿原では冬季積雪時に最大20cmも地表面標高が沈下するが、雪解けとともに標高を回復すること、しかし積雪時には、高位泥炭の熱伝導率が小さいので雪が溶けにくく、従って水=養が著しく少なくないこと、地表植生がミズゴケであっても笹群落に変化していても、地下180cmの平均透水量係数はほぼ等しいと見なせること、等を明らかにした。低位泥炭は、粘土と混合しているため、深さによって強熱減量が20%から90%、真比重も1.5から2.5までとばらつきが多く、透水係数の異方性は小さいこと等明らかにした。
N_2Oガスの地表へのフラックスは、土中濃度勾配に比例する拡散移動が支配的であることをつきとめ、その量は畑で8〜14ng/m^2s、休耕水田2〜10ng/m^2s、湿原で0〜1ng/m^2sであり、この順に大きいことを明らかにした。
熱的環境では、中間泥炭の深さ方向での地温分布において地表面が高温となる大きな温度勾配の存在を見い出した。温度勾配はおおそ0.13℃/cmで、深さ20〜50cmの間で昼夜安定した値を示した。そこで、中間泥炭の熱伝導率をプローブ法で測定し、その熱伝導率が通常の土壌の熱伝導率より著しく小さいことと、水分依存性に著しい特徴があることを見い出した。
【研究代表者】