ビフィズス菌・ビフィズス菌増殖因子検定用動物としてのヒトフローラマウスの有用性
【研究分野】実験動物学
【研究キーワード】
プロバイオティクス / ビフィズス菌 / ビフィズス菌増殖因子 / オリゴ糖 / 動物実験系
【研究成果の概要】
Bifidobacterium(ビフィズス菌)は腸内の有害菌の増殖や有害物質の生成を抑制するなど宿主に有用に働く菌として注目されているが、ビフィズス菌やビフィズス菌増殖因子が宿主に及ぼす効果を評価する良い実験系は確立されていない。本研究では、無菌マウスにヒトの糞便菌叢を投与したヒトフローラマウス(HFM)を作出し、ビフィズス菌やオリゴ糖が腸内菌叢の構成や活性に与える影響を検討する動物実験系としての有用性を検討した。HFMにヒトで通常用いられる8g/日に相当する量のフラクトオリゴ糖を飲水投与したところ総菌数に対するビフィズス菌の割合は上昇し、BacteroidaceaeやEnterobacteriaceaeの菌数は減少する傾向がみられ、フラクトオリゴ糖が腸内菌叢構成の改善効果を持つことがHFMを用いた実験系で確かめられた。また、HFMの作出時に投与するヒト糞便によってビフィズス菌が検出されなくなるHFMが認められたので、このHFMを用いてビフィズス菌とオリゴ糖の腸内菌叢改善効果を個別に評価することを試みた。HFMに高蛋白質食を給与し、腸内環境を悪化させた後、ビフィズス菌とフラクトオリゴ糖のいずれかあるいは両方を投与して腸内環境改善効果を検索したが、ヒトの常用量に相当する量のフラクトオリゴ糖の投与では明らかな改善効果は認められず、ビフィズス菌の定着も明らかではなかった。フラクトオリゴ糖の投与量を増加させたところ、投与量の増加にしたがって検出されるビフィズス菌数は増加した。以上の結果からHFMはビフィズス菌やビフィズス菌増殖因子などのプロバイオティクスの効果の評価の手段として有用であることが示された。ただしヒトの消化管症状に対する最大無作用量をはるかに越える量のオリゴ糖を投与してもHFMでは下痢などの症状は観察されず、これがマウスの特性なのか腸内菌叢の違いによるものかさらに検討が必要であろう。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1993
【配分額】1,200千円 (直接経費: 1,200千円)