自閉症発症機構におけるシナプス形成異常をもたらす分子病態解明
【研究キーワード】
自閉症 / バルプロ酸 / セクレトーム / シナプス / プロテオミクス / 神経細胞 / 接着分子
【研究成果の概要】
自閉症(ASD; Autism Spectrum Disorder)とは発達障害の一つである。本研究においては、げっ歯類ASDモデルとして頻用されているバルプロ酸投与妊娠マウスの出生仔におけるASD様の行動異常を惹起するメカニズムを解析した。その結果、神経細胞シナプス接着分子の一つであるLingo2の代謝産物分泌型Lingo2(sLingo2)が興奮性シナプス過剰形成を起こしていることを明らかとした。今後、sLingo2が興奮性シナプス形成誘導をもたらす詳細なメカニズムを明らかにすることで、新たなASD発症機構の理解につながることが期待される。
【研究の社会的意義】
本研究でASDモデルマウスの病態と関連して見出されたsLingo2はヒトiPSC細胞由来神経細胞でもシナプス異常を惹起する。また、興味深いことに、Lingo2遺伝子を含む領域のコピー数変異がASD患者において見出されており、ASD患者の死後脳患者単一核RNAシークエンスデータを用いたモジュール解析においてもASDターゲット遺伝子としてLingo2が同定されている。すなわち、Lingo2はASDの発症に深く関わっていることが想定され、今後Lingo2を利用した新たなASD治療・予防薬や診断法の開発につながることが期待される。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2020-07-30 - 2022-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)