神経情報伝達物質の放出制御の分子メカニズムの解明
【研究分野】神経科学一般
【研究キーワード】
IP_4 / IP_5 / IP_6 / シナプトタグミン / C2Aドメイン / C2Bドメイン / イノシトールポリリン酸 / 神経伝達物質放出 / カルシウム / シナプス小胞 / シウプス伝達
【研究成果の概要】
神経細胞にはこのIP3以外にも種々のイノシトールポリリン酸代謝産物が存在することからその重要性が考えられてきたが、特異的結合蛋白質が未同定であったため生理的機能の詳細は明らかではなかった。我々はイノシトールポリリン酸(IP_4,IP_5,IP_6)結合タンパク質として小脳よりシナプトタグミン精製することに成功した。シナプトタグミンの構造的特徴は膜貫通領域を一ヵ所持ちC末端の細胞質側にはプロテインキナーゼCのC2調節領域とホモロジーを有する配列が2ヵ所存在しそれぞれC2A,C2Bドメインと呼ばれている。C2Bドメインはカルシウム非依存的にリン脂質およびイノシトールポリリン酸(イノシトール-1、3、4、5-四リン酸(IP_4)、イノシトール-1、3、4、5、6-五リン酸(IP_5)、イノシトール六リン酸(IP_6))を結合した。これらの結果から我々は二つのC2ドメインが神経伝達物質の放出の過程で異なる役割を持つものと考え、各々のドメインに対する特異的抗体を作製した。次に我々はイカの巨大軸索のプレシナプスにこれらの抗体およびイノシトールポリリン酸(IP_4,IP_5,IP_6)をマイクロインジェクションすることにより以下の結論を得た。(i)シナプトタグミンのC2Aドメインは神経伝達物質放出の際のカルシウムセンサーとして機能しシナプス小胞とプレシナプス膜の融合の過程に関与すること、また(ii)C2Bドメインにはイノシトールポリリン酸が結合することによりC2Aドメインを介する膜融合の過程を阻害する(イノシトールポリリン酸が神経伝達物質放出の負の制御因子をして作用する)。さらに(iii)C2BドメインはClathrin assembly protein,AP-2を結合することによりシナプス小胞のリサイクリングの過程にも関与することが示唆された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
道川 貴章 | 東京大学 | 医科学研究所 | 助手 | (Kakenデータベース) |
井上 貴文 | 東京大学 | 医科学研究所 | 助手 | (Kakenデータベース) |
古市 貞一 | 東京大学 | 医科学研究所 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
RODOLFO R.Li | ニューヨーク大学 | 医学部 | 教授 |
福田 光則 | 東京大学 | 医科学研究所 | 学振特別研究員 |
LINAS Rodolf | ニューヨーク大学 | 医学部 | 教授 |
|
【研究種目】国際学術研究
【研究期間】1996 - 1997
【配分額】8,000千円 (直接経費: 8,000千円)