海馬神経回路におけるnon-LTP型シナプス可塑性の光学的測定法を用いた解析
【研究分野】神経科学一般
【研究キーワード】
海馬 / 長期増強(LTP) / アデノシン / CA3-CA2-CA1 / 記憶 / LTP / 長期増強 / 光学的測定 / 膜電位感受性色素 / 海馬スライス / 光学的測定法 / アデノシンA1受容体
【研究成果の概要】
記憶のシナプスメカニズムの一つとして、同一シナプスの高頻度刺激で誘発するシナプス伝達効率の長期増強(LTP)が見いだされて以来、その分子メカニズムが盛んに研究されてきた。しかし、物事を記憶するときには、激しい情動により突然目の前の光景が鮮明に記億に焼き付けられるような場合もある。このことは、単に同一シナプスを繰り返し使用してシナプスを強化するシステム以外にも、何らかの情動刺激によりスイッチが入るような記憶のシステムが存在する事を示唆している。
3年間の本研究により、海馬内の主な情報伝播経路としてCA3-CA1経路の他に、CA3-CA2-CA1経路が存在する事を、光学測定法により確認した。これまでCA2領域は独立した機能を持つ領域とは見なされていなかったので、これは新しい発見であった。また我々は、CA2の神経活動がアデノシンA1受容体拮抗薬で賦活化される事を見いだした。したがって、CA3-CA2-CA1経路は内因性のアデノシンにより制御されている可能性が示唆された。ところが、アデノシン受容体の分布に関する従来の報告には、この研究結果を裏付けるものが無かったので、我々はラット脳より精製されたアデノシンA1受容体に対する抗体による免疫組織染色を行った。その結果、アデノシンA1受容体はCA2領域により高密度に存在することがわかった。これらの研究結果により、内因性アデノシンにより性御される回路の切り替えによるnon-LTP型の記憶メカニズムが存在する事を示唆する事ができた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
白尾 智明 | 群馬大学 | 医学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
林 謙介 | Gunma Univ. Shc. Med. Dept. of Neurobiology and Behavior, Research Associate | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1997 - 1999
【配分額】4,600千円 (直接経費: 4,600千円)