発達期小脳における選択的シナプス強化・除去に関与する新たな遺伝子と機能分子の探索
【研究分野】神経科学一般
【研究キーワード】
生後発達 / 小脳 / プルキンエ細胞 / 登上線維 / 多重支配 / シナプス除去 / 神経活動 / critical period
【研究成果の概要】
生後発達における活動依存的な神経回路網形成の分子機構を明らかにする目的で、小脳プルキンエ細胞のシナプス除去をモデルとして研究を行なった。小脳プルキンエ細胞は、成熟動物では1本の登上線維によって支配されるが、発達初期には3〜5本の登上線維の多重支配を受けている。発達につれて過剰な登上線維が除去され、生後約20日までに成熟型の1対1の結合が完成する。我々のこれまでの研究から、小脳登上線維シナプスの発達過程において、生後15日から18日が神経活動に依存するcritical periodであり、この過程に代謝型グルタミン酸受容体1型からγ型プロテインキナーゼC(PKCγ)に至るシグナル伝達系が関与することが明らかにされた。すなわち、登上線維シナプスの形成・除去に関与する遺伝子はcritical periodにプルキンエ細胞でPKCγ依存的に発現が調節されていることが強く示唆された。平成12年度の研究において、マウス小脳プルキンエ細胞のみから調製したRNAを用いてcritical periodの前後で発現が制御される遺伝子およびPKCγの制御下にある遺伝子をdifferential display法で探索した結果、23の候補遺伝子を同定した。本年度は、これら23の候補遺伝子をさらに4つに絞り込んだ。その中には、チューブリンの重合、脱重合を制御するスタスミンなど既知の遺伝子と、未同定の遺伝子が含まれていることが明らかになった。さらにこれらの候補遺伝子の機能的意義を解明するため、遺伝子改変マウスの作成に着手した。
【研究代表者】