行動スクリーニング系の開発
【研究分野】神経化学・神経薬理学
【研究キーワード】
線虫 / 行動アッセイ / 化学走性 / カルシンテニン / 神経回路 / MIP-T1 / Traf3ip1 / アルツハイマー病 / 化学走性行動 / 行動変異体 / 行動スクリーニング / RNAi / 学習
【研究成果の概要】
1)前年度までに確立した化学物質を格子状にスポットする系を用いて、化学走性に必須な神経回路を同定する作業を行った。各神経のレーザー破壊の結果、ASE感覚神経およびAIZ介在神経がNaCIへの走性に必要であるが、AIA,AIY,AIB,RIA介在神経は必須ではないことがわかった(論文1)。
2)当研究室で感覚神経に特異的に発現することのわかった哺乳類MIP-TI(TRAF3-interacting protein1)ホモログが、線虫のDYF-11と同一であることが明らかになった。DYFはdye-fillingの略であり、感覚神経の繊毛が壊れていることを示唆するものであった。この遺伝子を破壊したところ塩や匂いなど、さまざまな化学物質への走性が低下した。繊毛の異常はBardet-Biedl病やネフロン癆などの疾病に至る。解析の結果、DYF-11は繊毛内輸送、ひいては繊毛の維持に必須であることがわかった(論文2)。
3)NaCIへの化学走性の可塑性に異常のある変異体のスクリーニングで得られた変異体のひとつを解析したところ、その原因遺伝子casy-1が哺乳類のカルシンテニンのホモログであることがわかった。カルシンテニンはアルツハイマー病の主要な原因遺伝子であるアミロイド前駆蛋白質(APP)と三者複合体を形成する膜貫通蛋白質である。CASY-1蛋白質もAPPと同様プロセシングを受け、化学走性の可塑性に必要なのは細胞外ドメインの一部分であることがわかった(論文3)。
このように、行動スクリーニング系を用いて、化学走性の神経回路の決定と、化学走性やその可塑性に必須な遺伝子の同定がなされ、有効な系の開発に成功したといえるが、行動のコンピュータによる定量化と変異体解析とをリンクすることには未だ到らず、平成21年度以降に実施の予定としている。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
國友 博文 | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】萌芽研究
【研究期間】2006 - 2008
【配分額】3,300千円 (直接経費: 3,300千円)