低分子量熱ショックタンパク質の新機能:翻訳制御における制御ターゲットの探索
【研究キーワード】
大腸菌 / 低分子量熱ショックタンパク質 / σ因子 / 翻訳制御 / 熱ショック応答 / 発現制御 / 翻訳
【研究成果の概要】
ストレスによって生じるタンパク質凝集(凝集体)は蓄積することで細胞毒性を示す場合がある。凝集体の処理にあたるのがシャペロンである。シャペロンの中でも低分子量熱ショックタンパク質 (small Heat shock protein; sHsp)は凝集体処理の初期ステップである凝集体の隔離を担っている。最近の応募者の研究から、大腸菌のsHspであるIbpAはシャペロンとしての機能以外に、mRNAとの結合を介して自身の発現制御機能も有していることがわかった。本研究ではIbpAによる新規発現制御ターゲットの探索を通じ、IbpAの発現調節因子としての生理的意義を明らかにすることを目的としている。目的の達成に向け、本研究では質量分析とRNAシークエンス解析の2手法にて行う新規ターゲット候補のスクリーニング、個別解析によるターゲットの特定、ターゲットの制御による生理学的意義の解明を行う。当該年度では質量分析を用いた大腸菌プロテオーム解析により、IbpA過剰発現が複数のHspの発現減少を引き起こすことが示された。次いで行った個別解析ではIbpA過剰発現によるHspの発現抑制は転写段階の制御であることが示された.これを受け、Hspの主な転写制御因子であるσ32に着目して更に解析を行った。その結果、IbpAはσ32の発現を翻訳段階で抑制することが示された.IbpAによるσ32翻訳制御が再構成型無細胞翻訳系でも再現されたことから、この抑制は他の因子を介さずIbpAにより行われていると示唆された。σ32は転写や分解、mRNA構造変化などにより細胞内存在量が調節されている。それらに加えIbpAによる翻訳制御機構が細胞内のσ32量調節をさらに厳密なものにしていると考えられる。
【研究代表者】
【研究種目】研究活動スタート支援
【研究期間】2021-08-30 - 2023-03-31
【配分額】3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)