ゲノム情報に基づく新機能ヒト抗体分子の創製と利用
【研究分野】生物・生体工学
【研究キーワード】
抗体 / ファージ提示法 / 変異導入 / 自己抗原 / 結晶構造解析 / 発現系 / 分子認識 / 巻き戻しシステム / 抗原抗体相互作用 / 蛋白性抗原 / X線結晶構造解析 / 熱力学的解析 / 変異体 / 非共有結合 / 蛋白質間相互作用
【研究成果の概要】
本研究では、ヒト抗体ゲノム情報に基づき、(1)遺伝子レベルの多様性の創出、(2)抗体の分子認識能による安定な生体外選択、(3)選択された抗体の高効率な調製系を構築することにより、生体内の免疫系を凌駕するような新機能ヒト抗体分子調製系の構築を目標とした.研究期間中の研究成果は以下の通りである.1.遺伝子の多様性:マウス、ヒト由来抗体可変領域を特異的に増幅できるDNAプライマーを設計、その増幅条件を検討した.抗体可変領域への無作為変異導入法として、Error-pronePCR法をとりあげ、無作為変異導入が可能な条件を検討し、金属イオンと反応時間の調節が重要であることを見出した.2.選択:可変領域断片が抗原存在下で安定になる機構を用いた選択を確立した.EGF受容体特異的ならびにNK細胞阻害性受容体(KIR)特異的ヒト抗体,生分解性プラスチック表面,金表面特異的抗体の選択・調製に成功した.1.で述べた手法により、ヒト型化した抗体へ無作為変異を導入、標的分子発現細胞を直接用いた選択を試みることにより、数箇所への変異導入により親和性の顕著な上昇を見ることができた.また,BIAC0RE2000のフロー・リアルタイムモニターリングシステムを用いた,選択法を確立した.3.調製系:抗体・各種サイトカイン等の調製に関して、添加剤の効果を考慮に入れた巻き戻し法の改良を試みた.アルカリホスファターゼなどの酵素との融合あるいは2種類の抗体断片や免疫賦括剤(サイトカイン)との融合を試み、安定な調製系を構築した.モデル抗体の分子認識能を詳細に解析した.抗体調製に関する巻き戻しシステムの分光学的解析を行った.4.選択された抗体の高効率な調製系の構築と構造解析:(2)で得られたヒト抗体可変領域について,大腸菌の高発現系で可溶性分子として調製し、精密な結合定数を測定した.また、生分解性プラスチック表面特異的抗体の分子認識機構を明らかにした.
【研究代表者】